不正など、何かと問題が発覚している毎月勤労統計調査ですが、それとは別に、国税庁が源泉徴収義務者からサンプルを抽出して、雇用と給与の実態を調査している統計があります。
それが、民間給与実態統計調査。
年一回の調査ですが、毎月勤労統計調査よりもサンプル数が多いのでこちらの方が信頼性は高いです。
で、早速ですが、給与所得者数の推移を見てみると
2013年以降増えていますよね。民主党政権時はほとんど増えてないのに。
しかも増えたのは非正規雇用者だけではなく・・・
正規雇用者も増加しています。
近年はどちらかというと正規雇用者の伸びの方が大きくなってきている感じです。
要は、アベノミクスで景気が回復してきて、企業は最初、比較的雇用しやすい非正規雇用者を中心に人材を確保していましたが、それでは人材を維持確保することが難しくなってきて、正規雇用に切り替えてきたということなんだと思います。
帝国データバンクのレポートを見ても、非正規社員の不足感は一服してきましたが、正社員の不足が拡大していますしね。
人手不足に対する企業の動向調査(2019 年 1 月) 帝国データバンク
で、肝心の給与の方ですが、こちらも伸びています。
かなり増えていますね。
賃金が上がっていないとは一体何だったのか・・・
非正規雇用者の給与総額が減っているのは、非正規雇用者の人数自体がマイナスになっているからです。
(それでも2012年と比較すると18%増加している)
以上は労働者全体の給与総額でしたが、今度は一人当たりの平均給与。
こちらも結構増えていると思いませんか?
2012年から比較すると5.8%も増えています。
ん・・・でもあれ?
労働者全体の給与総額が14%も増えているのに平均給与はの増加額は5.8%にとどまっているのはなぜなんでしょうねぇ・・・。
まあ、当ブログの記事を読んでくださっている方はもちろん分かると思うんですが、アベノミクス以降、新規の雇用者が増えました(8%くらい)。
その新規に雇用された労働者は当然、既存の労働者に比べ給与は低い水準となります。新入社員、中途採用者がいきなり高給取りで迎えられる・・・ということはまれでしょうからね。
というわけなので、現在のように新規に雇用者が増えていく段階では、給与の平均値は上昇が抑えられてしまうのです。
これがいわゆるニューカマー効果ってやつですね。
詳しくはこちらの記事を参照ください
↓
これは毎月勤労統計調査の名目賃金指数(現金給与総額)も同様です。
(統計の対象、サンプルが違うので数値は異なりますが傾向は同じです)
名目賃金は現金給与総額を指数化したものです。で、この現金給与総額は『総額』と銘打っていますが、労働者一人当たりの平均月収となります。
所定内給与と残業代、特別に支払われる給与の合計した『総額』だから現金給与総額と呼んでいるだけで、平均値なのです。
よって、この名目賃金についてもニューカマー効果による下方バイアスが加わっているわけですね。
で、実質賃金はこの名目賃金から物価の変動の影響を取り除いた数値であるわけですので、このニューカマー効果の下方バイアスの効果を受けています。
だから、労働者が増えて労働者全員が受け取る給与の合計は上昇しているが、平均値である名目、実質賃金はあまり上がらないという現象が起きているわけです。
このことを理解していないとこんなアホなツイートをしてしまうことになりますのでお気を付けください。
名目賃金は2013年~2017年の5年間で1.4%しか伸ばすことができなかった。そこで2018年は算出方法を変えてかさ上げするというインチキをして1.4%伸ばした。それでも物価には全く追いつくことができず,実質賃金はアベノミクス前と比較して3.6%も低い。全然評価できない。
— 明石順平 (@junpeiakashi) 2019年4月22日
まあ、実質賃金、名目賃金を上げるのは簡単かもしれませんね。アベノミクスの逆をやればいいんです。
景気を悪化させて、比較的賃金の安い労働者の首を切っていく。
そうすれば給与の平均値は上がっていきますので名目、実質賃金は上昇していくでしょう。
給与の総額は下がりますが、名目、実質賃金指数が上がれば他はどうでも良いんでしょ?
それにプラスして経済をデフレに落とし込めばカンペキ。
見事に実質賃金はうなぎのぼりになりました~。
って、そんなん全然評価できるわけがありませんよね。
というわけで、実質賃金、名目賃金だけを見て雇用や給与の状況、景気を測ることはできません。
複数の指標をみて総合的に判断する必要があります。
でも、それをやっちゃうとアベノミクスを否定することができなくなるので、アベガー共は実質賃金にしがみつくしかなくなっているんだろうなとは思いますが。
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