もう他に縋るものが無いからだと思いますが・・・
ツイッター上で「実質賃金」で検索すると以前よりニューカマー効果の存在、平均化の罠について周知されいて、だいぶ実質賃金ガーが鳴りを潜めた様な気がします。(あくまで以前と比べてですが)
ですが、例の某経済評論家の方はまだ振り上げた拳を下げるつもりはないようで・・・
このようなツイートをされています。
「安倍政権で就業者数が増えたから、実質賃金が減って当たり前だ!」論者の皆さん。安倍政権以前の就業者数が減っている時期、実質賃金が上昇していないのはなぜ? あんたたちの論法なら「就業者数増加⇒実質賃金下落」「就業者数減少⇒実質賃金上昇」になるはずでしょ?https://t.co/gGNCBjX4ky
— 三橋貴明 (@TK_Mitsuhashi) September 13, 2020
この某経済評論家さんが仰っている実質賃金と就業者数の推移のグラフがこちらのようです
http://mtdata.jp/data_71.html#syuugyou
ぶっちゃけて言って、このグラフでは何の反論にも証明にもなっていません。
と言うのも、このグラフの中で、安倍政権時と同様に急激に就業者数が伸びた例が他にありませんので、同じ条件がないんですよね。
過去の実質賃金の増減は就業者数以外の他の要因で増減していたんじゃないですか?
と言われればそれでおしまいでしょう。
過去に同じパターンが無いから間違っている とか言われても、それは過去はたまたまそうなっていたという可能性を否定できていません。
単なるグラフの相関性を見る、帰納法的な説明だけでは証明としては不十分だという事です。
要するに、平均賃金より低い賃金の新規労働者が増えたとしても、全体の平均値が押し下げられる事はないのであれば、そのことを演繹的手法により論理的に説明できなければ、証明したことにはなりません。
これ、論文の基本だと思います。
帰納法だけで結論立てる事の問題については七面鳥の寓話が有名ですね
『ある七面鳥が毎日9時に餌を与えられていた。それは、あたたかな日にも寒い日にも雨の日にも晴れの日にも9時であることが観察された。そこでこの七面鳥はついにそれを一般化し、餌は9時になると出てくるという法則を確立した。
そして、クリスマスの前日、9時が近くなった時、七面鳥は餌が出てくると思い喜んだが、餌を与えられることはなく、かわりに首を切られてしまった。』
他にもビールには水が入っている、ウイスキーにも水が入っている、ブランデーにも水が入っている。よって水を飲むと人間は酔う ってやつです。
帰納法的解析を否定するわけではないですが、少ないデータによる早すぎる一般化は結論を誤らせます。
ニューカマー効果は、
新規就業者は既存の労働者の平均賃金よりも少ない給与で雇われるケースが多い
よって新規就労者が急に増えれば、給与の平均値に下方バイアスがかかる
という、だれもが共有している一般的な知識、法則で論理が構成されています。
これを否定するにはこの一般的な法則が間違いであるという事を論理的、演繹的に突き崩さなければなりません。
果たしてあのグラフは新規労働者は既存の労働者よりも高い給与で雇われるケースが多いという事を説明していますか?
してませんよね?
ぶっちゃけ、あのグラフはニューカマー効果の本質から論点を逸らしているだけです。
実際、新規就労者の増減のバイアスを排除するために、15歳以上の人口の平均賃金で実質値、名目値を計算してみたところ
失業者、非労働力人口を含めた名目、実質賃金を計算してみた
よろしければクリックをお願い致しますm(__)m 人気ブログランキング 実質賃金については当ブログで何度も取り上げてきましたが、この指数の問題としては雇用者一人あたりの平均値であるため、雇用が回復し新 ...
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ちゃんと増えてますし。
そもそも実質賃金は就業者数で決まる なんて言ってない
そもそもですが、我々は実質賃金(名目賃金)は就業者数の増減で決まるなんて言っていません。
実質賃金(名目賃金)は様々な要因によって決まりますが、その要因の一つがニューカマー効果である、と言っているにすぎません。
他にも、
総実労働時間が減少している事から、短時間で働く人が増えてきている事が分かりますが、そういった人たちは、フルタイムで働く人よりも当然給与が低めです。
これも当然、平均給与に下方圧力がかかります。
また、パート比率の上昇も平均給与の原因の一つでしょう。
パートの人が増えたからと言っても、別に既存の正社員の方の給与が下がるわけではないのですが、パートと正社員をひっくるめて平均給与を出すと名目、実質賃金が下がってしまう。
これが平均化の罠ですね。
このような要因が重なった結果が、名目賃金の伸び悩みと、実質賃金の低下なのだと思います。
しかしながら、我々が受け取る給与の総額、雇用者報酬は増えているわけで・・・
実質賃金の低下だけを見ても仕方がないと思います。
そこまで過去の労働者増加→実質賃金の実例が欲しいと言うのなら・・・
それでも、過去に今と同じようなパターンが存在しないのはおかしいと主張される方がいるかもしれません。
ですが、ご安心ください。ありますよ実例。
原田教授が書かれた記事ですが、そこに昭和恐慌期、高橋是清が現在と同じ大胆な金融緩和を行って、デフレ不況を脱却した時の名目、実質賃金(当時は実収賃金)と労働者数の推移のグラフがあります。
昭和恐慌期のリフレ政策で賃金は低下したのか
原田泰(早稲田大学教授)
https://webronza.asahi.com/business/articles/2014092300002.html
見事に、労働者数の増加に伴って、実質実収賃金が下がっていっているのが分かるでしょう。
で、この昭和恐慌期って今の日本の状況と同じだと思いません?
・デフレ不況からの脱却
・大胆な金融政策の実施
名目実収賃金が微増であるところも現在とそっくりですね。
棒経済評論家の方は、過去に「コレキヨの恋文」なんて本も出版し、高橋是清の政策を絶賛していましたが、この是清の政策による実質賃金の低下をどのように評価されるのでしょうかね。
完全にブーメランになっていますので、もう「実質賃金ガー!」を続けるのはやめた方が良いと思います。