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捨てられている再生可能エネルギー?
毎日新聞の科学環境チームというアカウントが以下のツイートを投稿していました。
発電量が需要を大幅に上回って電気が余ると、再生可能エネルギーの出力を抑えるルールになっています。日照条件の良い九州電力管内の3~5月を調べると、原発5基分もの太陽光発電が無駄になってしまった日も。こうした「出力制御」の妥当性、効率的な管理の方法を考えました。 https://t.co/ouYfMBI6M2
— 毎日新聞 科学環境チーム (@mainichikagaku) July 31, 2023
九州電力管内において、余った分の再生可能エネルギーが抑制され、多い日では原発5基分の電気が捨てられている・・・ とのこと。
記事は有料で全文は読めないんですけど(課金するのも・・・ねぇ)、たぶん原発5基分も捨てられているんだから原発再稼働は不要だ!みたいなことを言っているのではと邪推します。
上記のようなことを言っていないとしても、毎日の記事のタイトル「原発5基分の再生エネ電力が無駄に・・・」は誤解を招く表記であるため、ツッコミが必要かなと思うんですよね。
ワット(W)とワットアワー(Wh)を混同している
毎日新聞の記事の一部を引用しますが
原発5基分の電気を「捨てた」日
今年3~5月の九州電力管内の出力制御を同社の公表資料をベースに毎日新聞が集計したところ、原発5基分に相当する500万キロワット超の抑制を実施した日が9日間あった。2月までに日本で実施された1日の出力制御で最も規模が大きかったのは同社が2021年4月18日に実施した382万キロワットだった。500万キロワット超の出力制御を行った9日間は天気の良い休日が大半で、多くの人が外出したことで電力需要が普段より低かったことが原因とみられる。
原発1基の発電出力は100万キロワット。
で、九州電力管内で原発5基分にあたる500万キロワットの再エネ抑制をした日が9日あった・・・とのことですが、
これだけを見ると、大量に再エネ電力が捨てられている様に見えてしまいますが、これ完全なミスリードなんですよね。
単位ワット(W)はその発電設備の設備容量、発電出力であり、電力量ではありません。一時間あたりに発電された電力量の単位にはワットアワー(Wh)を使います。
以下にワットとワットアワーの違いをChatGPT先生に聞いてみましたので参考まで
電力の単位である「ワット」(W)と「ワットアワー」(Wh)の違いを簡単に説明します。
ワット(W):
ワットは、エネルギーの転送率を表す単位です。具体的には、1ワットは1秒間に1ジュールのエネルギーを転送することを示します。電力の単位として使われ、機器や装置が消費するエネルギーの量を示します。例えば、60ワットの電球は、1秒間に60ジュールのエネルギーを消費します。
ワットアワー(Wh):
ワットアワーは、エネルギーの量を表す単位です。1ワットアワーは、1ワットの電力が1時間間続いた場合に消費されるエネルギー量を示します。電力の消費量や電気料金の計算に用いられます。例えば、100ワットの機器が1時間間動作した場合、その消費エネルギーは100ワットアワー(100 Wh)になります。
要するに、ワットはエネルギーの転送率を示すのに対して、ワットアワーはエネルギーの量を示す単位です。
ChatGPT先生、簡潔で分かりやすいです。
要は、速度と移動距離、みたいなものですね。
ワットが速度、ワットアワーが移動距離。
いくら瞬間的な速度(発電出力)が早くても、その速度を長時間維持できなければ移動距離(総発電量)は稼げません。
つまり、瞬間的に原発5基分の再エネ電力が捨てられたとしても、それ一日トータルだといくらなの? って話です。
毎日新聞の記事では電力の単位でワットを使っています。つまり速度です。発電出力(速度)だけなら瞬間的に原発5基分を超えることはおそらく可能でしょうね。
太陽光発電は、晴れた日の昼間ならば出力上がりますもんね。しかし、当然ながら日が落ちた夜間は発電できません。
一日を通してのトータルの発電量では、安定電力である原子力発電に軍配が上がるはずですが、この記事、わざと「電力量」とは書いていないところを見るに、読者にあたかも発電量で原発5基分の再エネを捨てているとミスリーディングさせる意図がひしひしと感じられます。
というわけなので、実際に捨てられた再エネの量を数値で確認してみたいと思います。
データ、数値で見ればはっきりしますからね。
2023年5月1日の太陽光抑制量を見てみる
というわけで、毎日の記事にある「原発5基分の再エネを捨てていた日」に該当すると思われる2023年5月1日の九州電力管内太陽光抑制量と、実際に稼働している原発4基の発電量をグラフにしてみました。
確かに、10時から12時の3時間の間、太陽光の抑制量は原発5基分の電力である500万キロワットを超えているようですが・・・(グラフ中の黄色の点線)
あくまで超えているのはその3時間だけで、超えていない時間の方が多いです。
記事では「9日超えた日があった」と書かれていますが、この様な書かれ方をすると、あたかも9日間丸々原発5基分の電力が捨てられていたかの様に錯覚してしまいそうですが、実際は一日の中の極一部だけでしかありません。
太陽光は当然夜間は発電できませんし、昼間でも天候が悪いと発電量がガタ落ちになります。
一方で原発は一日中一定の出力で発電し続けられます。
ですから、太陽光と原発の発電を比較するならば、この様な一瞬を切り取った瞬間最大出力で比較するのではなく、一日トータルでの発電総量で比較しなければ意味がありません。
上のグラフは、それぞれのグラフの下側を塗りつぶしていますが、この塗りつぶされた面積が一日のトータルの電力量となります。
Wh(ワットアワー) = W(ワット) × h(時間)
グラフの縦軸は1時間あたりの発電力(W)で、その24時間分の発電力をすべて積分すれば総発電量(Wh)となるわけです。
実際に計算してみました。※2023年5月1日のデータ
原子力発電量:9938万kWh
太陽光抑制量:3585.6万kWh
というわけで、この日(2023年5月1日)の太陽光抑制量は原発5基分どころか、実際に九州電力管内で稼働している原発4基分の発電量の3分の1程度でした。
まあ、グラフを見れば一目瞭然で、明らかに原発4基の発電グラフの方が面積大きいですよね。
これで原発は不要、太陽光だけで電気需要を賄える・・・みたいな誘導をしようとするのは無理があるんじゃないですかね。
そもそも毎日再エネ抑制が発生しているわけじゃない
この2023年5月1日は祝日ではなかったのですが、ゴールデンウィーク中で多くの企業が休みとなっており、気温もそれほど高くなかったため電力の需要が少ない日でした。(最高で25℃くらい)
九州電力管内における一日の総需要の平均値は約23,000万kWh(2020年4月~2023年6月)
2023年5月1日の総電力需要は18,634万kWhとだいぶ少なかったです。
加えて、この日は雲ひとつ無い快晴
太陽光の発電効率が最大化されたため、余った電力が生じた。
つまり、
需要極小 太陽光効率極大
この2つの条件が重なって初めて、毎日新聞が言っている原発5基分の電力が捨てられる日が発生するわけです。超超超レアケースです。
実際に、各月の原子力発電量と太陽光抑制量の合計値をグラフ化してみましたが(九州電力管内)
冷暖房需要の大きい夏場、冬場の抑制はほとんど無く、年中再エネの抑制が発生しているわけじゃない事が分かるかと思います。
このデータを見て、原発がなくても電力は足りているって言えますか?
極々レアケースだけを切り取って見せたミスリード
これまでの説明で、
「原発5基分の再エネが捨てられた」
の、カラクリについてご理解いただけたかと思います。
まあ、要は極々レアな状況の更に一瞬だけを切り取って見せただけの単なるミスリーディング記事。というわけです。
私としても、再エネのすべてを否定したいわけじゃないです。太陽光の最大出力の高さには目を見張るものがありますので、使えるものは使った方が良いと思う。
ですが、今回の毎日の記事の様な恣意的な数字の見せ方をされると反発、批判せざるを得なくなります。
それにしても、マスコミはなんでこんなに再エネを推すのか・・・。原発に恨みでもあるのか?と思える様な記事のオンパレード。
その裏にはいろいろ利権が絡んでいるのではないか? と思わずにはいられないんですよね。
原発の再稼働が進むと、再エネ業者は商売あがったりですもんね。