日本共産党の志位委員長が
「大企業の内部留保に課税したら賃金が上がり、投資も増える」
また
「内部留保課税は二重課税じゃない。行き過ぎた大企業減税への是正しようとするものだ」
と主張しているのですが、これ本当にそうなのでしょうか?
「大企業の内部留保課税」の提案について、財界から「二重課税」という批判があるが、わが党の提案は、行き過ぎた大企業への減税の一部を是正しようというもので「二重」にはならない。
— 志位和夫 (@shiikazuo) March 21, 2022
だいたい「二重課税」というなら、所得税を払った上に課税される消費税こそ「二重課税」の最たるものではないか。 https://t.co/i2GQo8kex6
ま、いろいろと私の考えをまとめてみます。
どの様なロジックで賃金が上がるのか?
志位さんは賃金が上がる・・・と主張されているわけなんですが、そのロジックが正直良く分かりません。
おそらくですが、内部留保としてお金を溜め込むと税金を余計に払わなくてはならなくなるから、それなら賃金として従業員に払ってしまえ
となる・・・、と考えているんだと思うんですけど、そううまくいきますかね?
それを考える上で、そもそもの話、内部留保とは何なのか? を整理したいと思うんですが、
内部留保は一般的な会計用語ではなく、それに該当するものとなると「利益剰余金」が近いかと思います。
利益剰余金(内部留保) = 純利益 ー 配当金
本来なら株主に配当する分の利益を会社の運転資金として留保してもらっているお金。それが利益剰余金(内部留保)です。
株主に配当せずに資金調達したお金というイメージで良いかと思います。
つまり、使う用途、目的が決まっているお金なんですよ。利益剰余金(内部留保)は。
しかしながら、世間一般的な『内部留保』のイメージとしては
「会社が無駄に溜め込んで切るお金」
これが一般的なんじゃないかなと思います。
ですが、よく考えてみて下さい。
会社が無駄にお金を溜め込んだとして一体なんのメリットがあるんでしょうか?
お金は寝かしておいても何の利益を生みませんよね?
ただただ目的も無く何の利益も生まないお金を溜め込む経営者なんてこの世に存在するでしょうか? 溜め込んだお金を眺めてニヤニヤしたいんですかね?
いたとしてもそんな経営者は株主総会で糾弾され、降板させられるのがオチです。資金をダブらせるなら配当なり、投資なりしろよ ってなるのが普通かと。
使う目的があるから株主から剰余金として配当に回さない事を認められているのに、それを使わなかったら株主に対する背信になりますよね。ありえません。
えっと、話をもとに戻しますが、利益剰余金(内部留保)は使う目的がある資金です。その性質は銀行からお金を調達する調達資金とほぼ変わりがありません。(株主から資金を調達している形になる)
もしその調達資金に課税してしまったらどうなるか?
不足する運転資金をどこか別のところから調達しなければならなくなります。
そう、それは我々従業員の賃金から・・・という事になりますね。
銀行が融資してくれれば良いんですけど、課税によって経営悪化しているわけなんですから、すんなり融資が通りますかね?
というわけなので、内部留保への課税で投資や賃金がアップする・・・その理屈がさっぱり分かりません。
課税されるなら配当に回せってなるのがオチじゃないですか?
内部留保=預金ではない
内部留保のよくある誤解として、預金や現金として存在しているというモノがあるかと思います。
先程も説明しましたが、内部留保(利益剰余金)は調達資金であるため、使う用途、目的が決まっています。
だから既に設備や従業員の給与に化けている可能性があるんですよ。
現金、預金として残っているのは、いざという時(災害や有事)のために残している分だけ・・・というのがほとんどじゃないかなと思います。
そんな潤沢に現金を余らせている企業があると思いますか?
あと、内部留保は投資したり、従業員の賃金として支払ったら減る・・・という認識があるかもしれませんが、
減りません
内部留保は累積していきます。設備資産として残っていくので、投資したら減るという類のものではありません。
だから、企業が内部留保を溜め込んでいる・・・という認識がそもそも間違っています。
なので、
「内部留保に課税したら、企業に賃金、投資にお金を回して内部留保を減らそうというインセンティブが働くはずだ」
というロジックそのものが破綻しています。
内部留保を減らすには?
え? じゃあ内部留保は減ることはないの? と思うかもですが、
減ることはあります。
それは企業経営が赤字になったときですね。
期首の利益剰余金 + 当期利益剰余金(当期純利益-配当金) = 期末の利益剰余金
前期の利益剰余金に当期の利益剰余金(内部留保)を足したら期末の利益剰余金になるわけなんですが、利益がマイナスになると当期の利益剰余金もマイナスになるので、累計の利益剰余金も減ってしまいます。
・・・というか、これ以外に利益剰余金(内部留保)が減ることあるのかな?
利益を出す限り増え続ける内部留保。これに課税なんかしたら一体どうなるか?
倒産企業が続出するであろうことは火を見るより明らかですよね。
あとはまあ、配当金を過剰に支払ったら利益剰余金(内部留保)は減りますね。やったね。
大企業減税???
あと、志位さんは大企業減税に対抗するために内部留保に課税するんだ。みたいなことを言っていますが、
法人税の大半を負担しているのがその大減税を受けているはず(あくまで志位さんの認識)の大企業だという事はご存知なのだろうか・・・
企業全体のたった0.7%しか存在しない資本金1億円以上の企業が法人税収の60%を負担しているわけで・・・(負担しているのは法人税だけでなく社会保険料も)
大企業減税? そんなのどこにあるの? って感じですわ。
それから、これ財務省の資料なのですが
内部留保率は資本金が小さい中小企業の方が大きい傾向があるため、内部留保に課税すると中小企業の方への打撃が大きくなるのでは? と、思うんですけど・・・どうなんですかね。
内部留保への課税。マジでメリットあるんですかね。
共産党は中小企業を潰すつもりですか?
内部留保(利益剰余金)はいらない子?
それから、この利益剰余金の推移グラフを見ていただきたいのですが、コロナ影響で企業活動が萎縮した2020年頃に利益剰余金が減っていることが分かります。(経済萎縮、自粛で赤字企業が増加した)
利益剰余金は企業によってはいざという時の保険、運転資金として確保している場合があり、まさに2020年はその利益剰余金でなんとか食いつないでいたわけなんです。
もし、内部留保への課税が行われていたらいざという時の運転資金を残す企業が少なくなり、何かパンデミックや災害が起こった時に雇用を維持できず、失業者が溢れる・・・という事態に陥る可能性があります。
内部留保はマスコミ等によるネガティブキャンペーンによって悪いイメージが定着してしまいましたが、決していらない子ではないのです。
居なくなって初めてその必要性に気づく・・・ではもう手遅れだと思いますので、私は内部留保への課税には反対します。
というか、本当にメリットあるの?
まあ、日本をぶっ壊すという目的をもっている人にとってはメリットだらけなのかもしれませんけどね。
まとめ
内容まとめ
- 内部留保(利益剰余金)は使用用途、目的が決まっている資金。
- 企業が無駄にお金を溜め込んでも何のメリットもない。
- 内部留保に課税しても賃金、投資ではなく、配当に回るのがオチ。
- そもそも内部留保は賃金、投資をしても減らないので、課税しても意味がない。インセンティブが働かない。
- 内部留保は企業のいざという時の備えとして一定量は確保しておく必要がある。無いと雇用が不安定になる恐れあり。