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ISD条項と種子法廃止のセットで日本崩壊?


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 いよいよ明日から種子法廃止ということになるのですが、ネット上では日本のコメがなくなるとか、モンサントガーとか、相変わらずのデマが飛び交っています。

 その中で種子法廃止とTPPのISD条項を組み合わせれば、非関税障壁だとISDで難癖つけられて、日本の規制が撤廃されて遺伝子組換え作物が入ってくる・・・みたいな、つぶやきを見かけたのですが。

 


 この主張・・・完全に矛盾していますよね。

 そんなにISD条項が強力で万能なら、種子法も訴えられて簡単に撤回できてしまいます。それなら種子法を廃止しようが維持しようが関係ないじゃないですか。

 それとも、種子法はISDの影響が及ばない、特別な法律なんでしょうかね。

 良く分かりません。

 

 そもそもなんですが、ISD条項については、今回のTPPで新たに導入される制度ではなく、日本がこれまで各国と締結してきた、EPAや投資協定の中に既に入っています。

 経済産業省のHPからまとめましたが、

 

経済産業省HPより

http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/investment/

○ISD条項(国対投資家の紛争処理)が入っている投資協定、EPA

1978年 日エジプト投資協定

1982年 日スリランカ投資協定

1989年 日中投資協定   ※条件あり

1993年 日トルコ投資協定

1997年 日香港投資協定

1999年 日バングラデシュ投資協定

2000年 日ロシア投資協定

2002年 日モンゴル投資協定

2002年 日パキスタン投資協定

2002年 日シンガポールEPA

2003年 日韓投資協定

2004年 日ベトナム投資協定

2005年 日メキシコEPA

2006年 日マレーシアEPA   ※条件あり

2007年 日チリEPA

2007年 日タイEPA   ※条件あり

2008年 日カンボジア投資協定

2008年 日ブルネイEPA   ※条件あり

2008年 日インドネシアEPA

2008年 日ラオス投資協定

2009年 日ウズベキスタン投資協定

2009年 日スイスEPA

2009年 日ペルー投資協定

2011年 日インドEPA

2011年 日コロンビア投資協定

2013年 日サウジアラビア投資協定

2014年 日パプアニューギニア投資協定

2014年 日クウェート投資協定

2014年 日イラク投資協定

2014年 日中韓投資協定

2014年 日ミャンマー投資協定

2014年 日モザンビーク投資協定

2014年 日カザフスタン投資協定

2015年 日ウルグアイ投資協定

2015年 日ウクライナ投資協定

2015年 日モンゴルEPA

2015年 日オマーン投資協定

○ISD条項が入っていないEPA、投資協定

2008年 日フィリピンEPA

2015年 日豪EPA

 

 日本は既にこれだけの国と投資協定を通じて、ISD条項を締結しています。

 ちなみに日本はアメリカとはISD条項を締結していないのですが、アメリカの企業が他の国に設置した支店、拠点から迂回して日本を訴えることが可能です。

 つまり、日本はインドネシアなどとはISD条項を締結していますので、アメリカの企業がインドネシアに子会社を持っていて、そこから日本に迂回して訴訟することができるというわけです。

 有名な例ではアメリカのタバコメーカーであるフィリップ・モリスが、オーストラリアの法規制に対して香港の子会社から訴訟を起こしました。

 アメリカとオーストラリアは直接ISD条項を締結していませんが、香港とオーストラリアはISDを結んでいます。だから訴えることが可能でした。

 

 日本企業もこの迂回訴訟をやった事がありますね。

 2006年に野村證券のオランダの子会社(サルカ)がチェコを訴えています。

 

 2015年時点で、全世界で3300件の投資経済協定が成立していますが、その投資協定の大多数にISD条項が入っています。

 つまり、もう既に日本はいつ何時、ISDで企業から訴えられてもおかしくない状況に置かれているわけです。

 

 ですが、TPP、ISD条項に反対している方々が言っているような状況、例えば

・国民皆保険制度が崩壊する

・自国民の安全、健康、福祉、環境を、自分たちの国の基準で決められなくなる

・巨大資本が投資先の国で投資事業を展開した際に「儲からない」という理由だけで提訴できる

・公共工事入札では、地元の業者を選べば「差別だ」と訴えられる。

・非関税障壁だと難癖つけれられて国内規制が無くなる

 

 上記のような事になっていないのはなぜなのでしょう?

 日本はまだ一度もISDで訴えられたことがありません。

 

 そもそもISD条項の目的は

 ある国に投資をした外国企業が、その国の法改正、新たな法規制により不利益、損失をかぶってしまった場合、その企業が国を訴えて賠償金を請求することができる制度です。

 途上国など、法整備があまり進んでない国に対して、企業は上記のような法規制的なリスクが付きまとうため、海外企業はなかなか投資に踏み切ることができません。しかしISDがあれば、投資をして不利益を被ったとしても国を訴える事ができますので、安心して投資ができます。

 つまり、外資企業が投資をする際の保険の様な役割を果たす制度、それがISD条項です。

 そう、あくまで保険なんですよね。

 巨大なぐろおばる資本が、国の法律を都合の良い様に、意のままに動かすためにできた制度・・・ではありませんw

 

 あと、ツイッターなどでISDで既存の規制がこじ開けられると噴き上がっている方がおられますが、既存の規制や法律で海外の投資家、企業が損失を被る、もしくは思ったより儲ける事ができなかったとしても、それってただ単にその企業がバカだったというだけの話です。

 事前に分かっている情報(法規制)にきちんと対処しなかっただけですので、これで訴えても正当性が認められるわけがありません。そんな事がまかり通るのであれば、訴訟乱発で今頃世界は大混乱に陥っていることでしょう。

 

 常識的に考えて、こんなヤバイ条項を3300件もの投資協定の中に組み込むわけがありません。

 

 また、日本の法律が非関税障壁だと難癖つけられ、ISDで訴えられて改変させられる事を危惧されている方がいますが・・・

 自由貿易、交易の基本は内国民待遇です。これは相手国の企業や投資家も国内企業と同等に扱えということで、当然のことだと思います。WTOでも認められています。つまり国内、海外で差別するなということです。

 例えば、日本の車の排気ガス規制が厳しすぎてアメリカの自動車メーカーが参入できない。非関税障壁になっている。という訴えがあったとしましょう。

 でもこれ、日本国内の市場において排気ガスの規制は日本メーカーもアメリカメーカーも条件は同じで、別に差別はしていません。別に海外企業だけに差別的な制限を加えているわけではありません。

 種子法や日本で遺伝子組換え作物を規制している法律も然り。別に海外企業のみに規制を課している法律ではありませんので、これを不当だとして企業が日本を訴えるのは無理があります。

 

 まあ、海外企業だけに重い規制を強いたり、国内企業だけを優遇する法律を作ったりしたら当然訴えられますけどね。

 非関税障壁=ISDS違反 ではないということです。

 

 大体、このような対外差別的な政策を中韓ロシアなんかがやったらみんな怒るでしょう?

 例えば中国政府が、中国内の日本企業の資産を没収したりとか、日本企業だけに重税をかけたりとかした場合など。

 この場合、ISD条項がなければ日本企業は泣き寝入りするしかありません。だって、警察権力、軍隊を持つ国家相手に一般企業が抗う術などありませんからね。

 

 ツイッターでISD条項に何のメリットがあるんだと言ってきた方がいましたが、ISD条項なしに、中国やロシア、法整備が未熟な東南アジアに投資するなんてリスクが大きいことできるわけ無いでしょう?

 ただ、もともと法整備が行き届いている日本においては、ISDで訴えられるリクスはほとんど無いと思います。現に20年以上もの間、一度も訴えられたことがありませんからね。

 よって、日本においてはISD条項はメリットの方がデメリットを遥かに上回ると言えます。

 

 また、訴えられたらアメリカが勝つようになっている。アメリカは負けたことが無い! みたいなツイートも散見されますが、外務省の資料によると

 

国家と投資家の間の紛争解決 (ISDS)手続の概要

http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000089854.pdf


 

 確かにアメリカは国としては負けてないけど、企業として訴えた場合・・・ずいぶん負けてますよね。

 勝率は低い方なんじゃないでしょうか? アメリカは負けたことがないなんてウソです。

 

 結局のところ、種子法廃止にしても、ISD条項にしても、批判している人は以下の二種類なのかなと思います。

 何でも無い事を針小棒大に取り上げて不安を煽り、それをビジネスとしている者。

 そしてその愛国ビジネスに乗せられちゃった人。

 

 おそらく4月以降、種子法については愛国ビジネスネタ的旨味が無くなってきますので、取り上げることも少なくなり、いずれ、あれは何だったんだ? みたいな感じになろうかと思います。

そして、こういう愛国ビジネスで稼いでいる連中ってのは、また別のしょーもないネタをどこからか発掘してきて『亡国! 亡国!』ってやるんでしょう。どうせ。

 種子法廃止=モンサント法だ! とか言ってた事は完全に棚に上げてね。

 

 まあ、彼らの言う『亡国論』が全て本当のことだったら、日本は今まで何回滅びたのかわかんないです。

 

 しかし、こういう類のものはツイッターやブログで『我こそは憂国の志士!』みたいな感じでイキりたい層に対して、ある一定の需要があります。陰謀論って特にその分野に詳しい知識が無くてもできてします。お手軽です。

それに悲観論って楽なんですよ。

たとえ、自分達が訴えていたような悲観的な結果を迎えることが無かったとしても、世間は忘れてくれますので。

『お前が昔言っていた悲観的な結果にならなかったじゃないか! どう責任取ってくれるんだ!』 って怒鳴り込んでくる人はまずいないでしょうしw

 

 だからこの手の愛国ビジネスが完全に無くなることはないんだろうなと思うと、なんというか・・・ため息しかでないっすね。

 

 でも、最近そういった風潮に変化があるような気がするんですよね。例えば放射能についてのデマを吹聴していた連中について、過去の発言をツイッターなどで発掘されて批判されているのをよく目にします。

 現在のようにSNSが発達した世の中では、過去の発言が人々の曖昧な記憶ではなくて、すべてデータとして残ってしまいますので、昔みたいに『テキトーな陰謀論言っても忘れてくれる』が通用しなくなっているのではないかと思う。アカウント消しても画像や魚拓取られたりしますし。

 なので、私はもうそろそろこの様な『愛国ビジネス』は潮時なんじゃないかなと思っているんですけどね。どうなんでしょうか?

 

 とまあ、私も今でこそこうやって、エラソーに言ってますけど、自分も初期はTPP亡国論に乗せられていた口だったので・・・あまり大きな声では言えないんです。

 ただ、言い訳をさせてもらえば、あの当時TPPに賛成とか言った日には殺されかねないような雰囲気でしたので・・・。でもまあ、ヘタレであることには変わりないですね。すみません。反省しております。

 というわけで、誰かが言っているからとか、そんなんで安易に『亡国論』に乗るんじゃなくて、ちゃんとその内容を勉強して、自分の頭で考えて物事に真贋を見極めるようにしないと、愛国ビジネスの片棒を担ぐ事になってしまいますので、十分に気をつけましょう。

 


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