経済 規制緩和

水道民営化反対! と叫ぶ前に、日本の水道を取り巻く状況を冷静に見てみましょう

はじめに

先週でしたっけ。
水道行政に関するパブリックコメントの締切られるということで、ツイッターのトレンドにも上がり、当ブログのアクセス数が跳ね上がるという事がありました。
 
まあ、大半の人が水道事業の民営化反対という事でコメントしたんだと思いますが、まず念頭においていただきたいのが、
 
水道事業について政府は民営化しようとしているのではなくて、保守運用の業務を民間に委託しようとしているだけだということです。
 
設備の保有者は自治体のままですし、サービス内容や価格の決定権も自治体にあります。
 
しかも、それが可能になったPFI法の制定は2011年の事。つまり民主党政権下で既に「官民連携」の水道事業は可能になっていたわけでして・・・
 
2011年を思い返してみても、今のような「民営化反対」の声は殆どなかったと思うんですけどね。なぜ今になってこんなに騒がれているのかちょっと良く分かりません。
 
それはまあいいとして、PFI法を導入した本人である旧民主党の野党議員が「民営化反対!」と叫んでいるのはちょっとね、全く理屈が通らない話だなとは思います。
自分がやったことは全く覚えていないんですかね。
 
で、今回の法改正はその民主党が制定した「PFI法」では的機関の影響力が小さすぎるのではないかという批判があったため、「公の関与」を大きくする方向で修正を加えるという内容になっています。
 
つまり、方向性としては「民営化の逆」の法改正であり、これで民営化反対と吹き上がる理由がよく分かりません。どちらかと言うと規制の強化なので。
 

今回の水道法改正は規制の強化が目的

従来のPFI法ではコンセッション方式で運用を委託する場合「水道事業の認可」を国に返上し、委託先の民間企業が認可を新たに受けるという形をとっていました。
 
でもこれでは自治体は当事者から外れるということになり、いざ災害などが起こったときに、責任を持って復旧にあたることができません。
 
民間に主導権を握らせたままでは流石にリスクが大きいということです。
 
今回の法改正で「水道事業の認可」は自治体に残したままで、自治体の議会で決定した運営設定に民間企業が従うという形にしました。
 
ね? 規制の強化でしょう?
 
更に、その地方自治体の議会での決定事項についても国がチェックを入れることになっています。
 
水の安全、品質を守るために国と自治体がきちんとモニタリングできる体制を強化する内容になっていますので、これに反対する理由はどこにもないと思います。
 

日本の水道事業を取り巻く状況

さて、これからが本題。
なぜ日本で水道事業を「官民連携」に変えていこうとしているのか、その背景には以下のような理由があります。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/innovation/170405/pdf/shiryou3-1.pdf

現在、高度成長期に敷設された上下水道の老朽化が進んで、全国で15%の水道管が耐用年数超えだそうです。
また、耐震化工事もほとんど進んでいません。
 
にもかかわらず、今後水道の需要は人口減少とともに先細って行くことが予想されており、小規模な自治体では改修どころか、運営を維持していくことすら困難になってきています。
人員も減って、人手も足りないみたいですし。
 
 
このような背景があるため
水道事業の体制を見直し、より効率化を図っていこうという動きがでてくるのは、ごく自然な流れなのではないかと思います。
 
 
というのも、今の日本の水道事業は非効率の極みなんですよね。
 
現在の市町村の数は1741もあり、上下水道の事業者数は1388にも上ります。
 
これだけ細かに事業者が別れていては重複した業務も当然発生し、人手もコストも無駄にかかります。
 
また、小規模故に不測の事態に十分に対応できません。
 
だから、国が率先して広域連携を推進していこうという話です。
広域連携が成れば、重複した業務も統一でき効率化が図れますし、ノウハウや設備なども共有できるため品質も向上できます。
 
で、その削減できたコストで、水道の改修を行っていく。
 
というわけで、これの何が問題なのか私にはさっぱりわからないというのが正直なところです。
 

国債発行すれば済む話?

当ブログのコメント欄などでも、
 
「そんな民間に委託しなくても、国債を発行して突っ込めば水道の整備は可能だ」
 
みたいな意見はあります。
 
しかし、この方法では様々な問題、副作用が考えられます。
 
 
まず、国債の発行・・・つまりお金を突っ込んで解決ということは、上で説明した水道事業者が細切れになっている問題をそのまま放置するということですよね?
 
広域連携推進に対する対案なんですから。 
 
ですが、そのような非効率な体制を維持しながらお金を突っ込むということは、水道事業における生産性の向上を放棄するということになり、日本経済にとってもよろしくありません。(実質成長はできません)
 
そもそも、人手不足はどうするの? という話ですし。お金だけあっても人的リソースがなければどうにもなりません。
 
ならば、その人的リソースについてもお金で雇えば良い・・・という事になると、その非効率的な体制を維持するために、他の民間の事業から人的リソースを奪うという事になります。
 
昨今の各業界での人手不足の深刻さは皆さんご存知でしょう。
 
まあ、これがいわゆる政府によるクラウディングアウトってやつです。
 
 
最悪これが利権となって簡単に廃止することができなくなり、日本経済の成長に悪影響を与える事になりかねませんし、国債発行分が増税で穴埋めになるという可能性も十分にあります。
 
ただ単純にお金を突っ込めばいいというわけではないですよね。

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