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コメが余っているのにコメが不足する 種子開発と市場ニーズのミスマッチ 種子法、計画経済の弊害


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コンビニやスーパーなどで販売されているおにぎり。その価格がこの2年あまりで約20%上昇しているそうです。

その原因は下記の日経新聞のニュースでも紹介されているように業務米の不足にあります。

 

業務用米、不足に悩む中食・外食産業   2018/1/6 日経新聞 電子版

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25375040V00C18A1EA3000/

『 外食チェーンや総菜メーカーなどが業務用米の不足に頭を抱えている。共働き世帯の増加などで外食や中食の需要は拡大しているが、コメが足りず牛丼やパックご飯は値上げを余儀なくされている。飼料用コメへの補助金などで供給にゆがみが生じているためだ。

 「業務用米があまり出回らず、なかなか買い付けられない」。昨年11月末に開かれたコメの需給動向を議論する農林水産省の会議。コンビニエンスストア向け総菜を生産する、わらべや日洋ホールディングスの妹川英俊会長は声高に窮状を訴えた。

 手軽に家庭で食べられる総菜は需要が拡大している。ただ、業務用米の値上がりと品薄への対応は企業努力では限度がある。妹川会長は「このままではコメの使用量を減らした新商品の開発も考えなければいけない」と厳しい表情だ。

 日本炊飯協会(東京・豊島)が農水省などのデータを使って試算したところ、業務向けが主力の22銘柄の平均取引価格(玄米60キロ)は3年連続で上昇。2017年は前年比10%増の1万4895円だった。全銘柄の平均取引価格との価格差も徐々に縮まっている。

 同協会の福田耕作理事・顧問は「値ごろ感のあった業務用米の価格は、最高評価『特A』のコメとあまり変わらなくなっている」という。

 苦境に耐えきれず企業の値上げも相次ぐ。佐藤食品工業は主力の包装米飯「サトウのごはん」の一部商品を昨年11月から値上げした。値上げ幅は1パックあたり2~10円で、1988年の発売以来初めてだ。牛丼チェーン「すき家」も11月から牛丼の中盛り以上を10~50円値上げした。(後略)

コメは大きく以下の3種類に分けられています。

 我々が一般に家庭で食べる『家庭米』

 価格が安く、外食産業、コンビニ、スーパーの弁当、おにぎりに使われる『業務米』

 家畜の餌として使用される『飼料米』

 

 最近、その中の『業務米』が著しく不足し、価格が高騰しているそうです。

 

以下グラフ資料は農林水産省「米に関するマンスリーレポート(平成29年2月号)」 より

http://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/soukatu/attach/pdf/mr-19.pdf

 


 

この『業務米』の市場シェアは2016年で約37%もあり、年々増加傾向です。(下図)

 


近年共働き世帯が増えてきて、食事が外食、もしくはスーパー、コンビニで弁当、惣菜を買ってきて食べる『中食』が増えてきている事が『業務米』の需要を押し上げています。


 ところがコメの生産については業務用向けではなく、家庭向けの高価格銘柄を中心に作っているため、業務米の生産が需要に追いついていないのが現状。

 需要と供給にミスマッチが生じています。

 まあ、これには政府が『飼料米』に補助金を突っ込んだため、生産がそちらに傾いた影響もありますが・・・

 

 その結果。


 『業務米』として需要の高い安い価格帯の銘柄の価格が上昇

 普通のブランド米との価格差が無くなってくるという事態になってしまいました。

 

 近所のスーパーでも「より良い品質のお米に変更するためおにぎりの値段を上げさせていただきます」みたいな張り紙を見かけたのですが・・・。これはまあ、業務米の価格高騰により普通の家庭用米との価格差が無くなってしまったがための、苦肉の対応なのだろうなぁ・・・と思いましたね。

 『業務米』を頑張って使い続けての値上げよりも、品質が良いとされる『ブランド米』に切り替えての値上げの方がまだ消費者には受け入れられると・・・。そのような判断なのだと思います。

 

 まあ、要するに市場が求めているのは安い『業務米』なのに、実際に生産されているのはブランド米を始めとした高い『家庭向けのお米』

 なぜこのような事態になったのかというと。政府の農政、農地政策の不味さもありますが、種子法による悪影響も無視できません。

 種子法については当ブログで繰り返し説明してきたので、もう説明は不要かもしれませんが、都道府県が責任を持ってその地域にあった品種を育てて、その種子を供給する義務を負わせたもの。戦後、民間企業では開発に時間と資金が必要な種苗の開発は難しいと考えて、行政が主導して種苗の開発を行い、タネを供給するように義務付けたわけです。

 

 ですが、現在は戦後とは違い、コメが余り生産調整として減反政策までやるような状況になってきました。コメの総需要も毎年8万トン程減少しています。日本はコメが余っているんです

 ところが、行政は民間とは違い、ビジネスでは無いため、市場のニーズの変化を読むことはしません。外食産業の発展により今後『業務米』の需要が増えてくるだろうという指摘は、以前からあったものの、各都道府県は市場のニーズを無視して、種子法に基づき高値で売れるブランド米の品種を奨励品種にして開発し続けるという事態に。

 まあ、当然農家は都道府県のお墨付きの付いた奨励品種を買って、作付けるわけで・・・。業務用として多収特性を持った民間の品種はあまり普及しません。

 

 それが、現在深刻化している『業務米』の不足の原因

 

 要するに各都道府県が『ブランド米開発競争』に勤しんだ結果が今の状況というわけですね。

 

 まあ、各都道府県もプライドと言うものがありますから、安い業務用米を奨励品種に据えることはなかなか難しいんでしょうけどね。

 しかし、民間ならばこのような間違いを起こすことはあまり無いと思います。民間企業は市場のニーズの変化を捉えられなければ破綻するだけですからね。

 以前のエントリーで紹介した民間開発の多収性品種『みつひかり』の種籾が、行政の奨励品種の10倍の価格にもかかわらず、シェアを拡大しているのは、この『みつひかり』が市場のニーズを捕らえているからです。

農林水産省 『民間企業開発品種『みつひかり』で多収、作期分散を実現』より

(種子法デマ)これが価格10倍の根拠なのか? 種子法は種苗法とは違うんですよ。

よろしければクリックをお願い致しますm(__)m 人気ブログランキング  前エントリーの補足となりますが、山田正彦氏の種子法廃止で「コメの価格が10倍になる」発言、これの根拠はなんなのかと色々調べてい ...

続きを見る

 

 だから、今回種子法を廃止して、民間のノウハウを取り入れ、需要と生産のミスマッチを解消してコメ不足を解消しよう。

ただそれだけの話なんです。

 それがなぜかモンサントがーとか、日本の農業が滅びるとか話が明後日の方向に行っちゃってるわけなのですが・・・。

 話が飛躍しすぎて、正直わけが分かりません。

 

 もし、このまま種子法を維持し続けると。業務米不足は解消されず。外食、中食の価格が上昇して庶民の生活を圧迫。最終的には輸入米に頼らざるを得なくなるという事態になりかねません。

 これが日本の農業を守るということになるのでしょうか? 甚だ疑問です。

 このまま市場のニーズを無視して、都道府県が己のプライドを掛けて「ブランド米開発戦争」を続けていたら、それこそモンサント等にシェアを奪われて、日本の公的機関が開発する種子は崩壊してしまうと思うのですが・・・

 

 というか、もういい加減にこのような計画経済的な農政はやめにしませんか?

 バターの不足や小麦価格の高騰も国が輸入量を規制、コントロールしているからです。バターの輸入差益(1,159円/kg)は農水省の利権の温床に…

 そのしわ寄せ、被害を被るのは最終消費者である我々です。

 まあ、種子法の利権はバター、小麦の「白モノ利権」に比べれば可愛いものですが・・・

 

 あと、コメントでも頂いていますが、農業競争力強化支援法。これの中の「民間への知見の提供」。この文言が権利の流出にならないかという話がありますが、これも一方的に民間にノウハウを受け渡すというわけではないです。

 官にはこれまでの種子開発で培ったノウハウは持っていますが、市場、需要者のニーズを捉えることに関してはノウハウを持っていません

 一方で、民間は野菜や花の分野で市場のニーズを読んで種子を開発する知見に富んでいるわけです。

 種子法の廃止は、官民のノウハウを統合して、官民一体となって広域的、戦略的に種子の生産、普及を進めていく事を目的としています。

 

 別に、種子法がなくなっても、都道府県等における種子開発、供給体制も無くなるわけではなく、民間とも協力して開発するというだけの話。これを進められなければ種子法を廃止した意味がなくなりますので、「民間への知見の提供」は当然としてやらなければならないでしょう。

 また、知見の提供と権利の譲渡は全くの別物です。

 「こしひかり」や「あきたこまち」などの都道府県が開発した品種の権利は種苗法で守られますので、各地のブランド米がなくなるわけではありません。

 実際には官民が共同で出資した合弁会社が種苗の開発を行う。様な流れになると思われます。

 というか、もう既に独立行政法人という形でやっているところもありますしね。

 

 それ以前にアレですね。

 種子法廃止で吹き上がっている人達は、どうも

 民間=悪

 という前提条件、絶対的な価値観があるように思います。

 

 ですが、よく考えて見て下さい。民間が市場の声を無視して好き勝手やって生き残れるわけがないでしょう。税金で守られているわけではないんですから。

 それに今の世の中、民間企業の活躍で回っているんですけどね。更に東証上場一部企業で外資の資本が入っていない企業など皆無です。

 

 外資が日本を滅ぼし食い物にする?

 もし、それが本当ならとっくの昔に日本は滅んでますよ。

 

 そもそも、我々日本国民の大半が、その憎き悪の民間企業、外資企業で働いているじゃないですか?

 私は会社でレントをシーキングしながら働いてなんかいませんよ。みなさんもそうですよね?

 とにかく、種子法の役目はもう終了して、かえって弊害の方が大きくなってしまっているのが現状です。きちんと現実を直視して頂きたいと思います。

 


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