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 契約社員に裁量労働制が適用可能という政府答弁書出て、閣議決定がされました。

 それで、サービス残業が合法化されてしまうという悲観的な声が多く見られるのですが、本当に裁量動労制が契約社員にも適用されて残業がゼロになってしまうのでしょうか?

 

契約社員も裁量労働に 「適用可能」と政府答弁書 2018年2月6日 東京新聞

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018020601001431.html

『 政府は6日の閣議で、今国会に提出予定の働き方改革関連法案に盛り込まれる裁量労働制について、雇用形態や年収に関する要件はなく「契約社員や最低賃金で働く労働者にも適用が可能だ」とする答弁書を決定した。

 裁量労働制は実際に働いた時間にかかわらず、事前に労使で取り決めた分だけ働いたと見なす。指示を受けずに仕事の進め方を決めることができる人を対象としているが、長時間労働を助長するとの批判もある。実際に裁量がない人にも拡大される恐れがあるとして、野党は反発している。

 政府はこの制度のうち、事業運営の企画などを担う「企画業務型」の対象業種拡大を法案に明記する考えだ。』

 

 ちなみに私は、野放図に裁量労働を拡大するのは当然NGだと思っています。

 悪用されれば、残業代がカットされ事になる・・・これはまあ、その通りだと思いますので。

 裁量労働のメリットをきちんと活かすのなら、裁量労働がマッチする業種、仕事内容の労働者のみに限定するべきだと思います。

 ただ、いま巷で騒がれている「契約社員に裁量労働制が適用可能」という報道は、いささかこの制度の内容を無視して「派遣も残業ゼロになる」という言葉だけが独り歩きしている感があります。

 というわけで、この制度の中身をきちんと精査してみましょう。

 厚生労働省の専門業務型裁量労働制のページを見てみると、裁量労働制を適用できるのは以下の19業種に限られます。

 

専門業務型裁量労働制 厚生労働省のページより

http://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/senmon/index.html

(1)新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務

(2)情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析又は設計の業務

(3)新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法律第132号)第2条第4号に規定する放送番組若しくは有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条に規定する有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送法(昭和47年法律第114号)第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送の放送番組(以下「放送番組」と総称する。)の制作のための取材若しくは編集の業務

(4)衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務

(5)放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務

(6)広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)

(7)事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)

(8)建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)

(9)ゲーム用ソフトウェアの創作の業務

(10)有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)

(11)金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務

(12)学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)

(13)公認会計士の業務

(14)弁護士の業務

(15)建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務

(16)不動産鑑定士の業務

(17)弁理士の業務

(18)税理士の業務

(19)中小企業診断士の業務

 主に士業、経営者、企業の中枢で事業計画に携わる人などに限定されている事がわかります。

(9)のゲームのソフトウェア開発については誤解されやすいのですが、これはプログラマーが対象ではありません。あくまでゲームの企画、立案を専任としている人が対象です。

 実際にプログラマーに裁量労働を適用している会社がいて、労基が是正措置を取った例があるそうです。

 デザイナーについても純粋にデザインを考える人以外は適用外みたいです。アシスタント的な人には裁量労働制を適用できません。

 うーん。この19業種を眺めてみてどう思いますか?

 これって正社員でも適用できる人はそうそう多くないのではないでしょうか? ましてや派遣先から仕事を請け負う派遣社員で適用できる人は稀だと思います。

 

 でも

「裁量労働制」を悪用し、正社員や派遣を残業ゼロで働かせるブラック企業がいたらどうするのだ?

 という意見も当然あろうかと思います。

 しかし、その場合はこうなりますね。

相次ぐ「裁量労働制」の不正 外資大手医療機器メーカーにも是正勧告   2018年1月28日 BuzzFeed News

https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/medtronic-jp?utm_term=.fmGR0jgn4#.aeLD1Rdnv

『米大手医療機器メーカー「メドトロニック」の日本法人が、本社社員に導入していた「企画業務型裁量労働制」に関連し、三田労働基準監督署から2度にわたる是正勧告を受けていたことが、BuzzFeed Newsの取材でわかった。

関係者によると、「適法ではない裁量労働制のもとに行なっていた時間外労働に対する残業代が未払い」であるという従業員からの申告が労基署にあったことをきっかけに、是正勧告があった。

勧告を受け、同社では人事制度を変更。残業代が支払われた社員もいたという。

「企画業務型裁量労働制」は、企業の中枢などで事業計画などに携わる業務を対象にしたもの。営業職などの関係のない職種に不正適用する例もあり、専門家は注意を呼びかけている。(後略)』

 企業が適法ではない裁量労働制を従業員に強いて、残業代をカットしている様なケースがあったら、労基に持ち込めばOKです。違法な「裁量労働制」は無効化できます。

 無効化できる例についてはこちらにまとめられていますので、参考まで。

 

裁量労働制Q&A

http://bku.jp/sairyo/qanda/

 

 基本的に「裁量労働制」を適用させるためには、労使との決議内容を労基に提出しなければなりません。

 そもそもですが、労組がある正社員ならともかく、派遣社員はどうやって会社と労使協定を結ぶのだろう・・・。

 ものすごくハードルが高い様な気がしますが。

 

 一応労組が無くても、労働者の代表者が会社と交渉して、労使決議をする事ができるみたいですが、その代表者は対象となる労働者の過半数の代表を選んでいなければ無効となります。また、交渉の過程、プロセスについて労働者に開示する義務があります。議事録がない、または公開されていない決議は無効です。

 要するに会社が勝手に「あんた代表ね」と労働者から無作為に代表を選んで、労働者には秘密にして決議を労基に提出しても無効になってしまうという事です。

 

 また、仕事が終わって帰ろうとしたのに、上司が別の仕事をふっかけてきて帰れなくなった。また、定時までいるように指示されたり、残業を強制されたりした場合

 この場合、完全に社員の裁量を阻害していますので、「裁量労働制」を無効化できるそうです。

 

 また、会社や上司が無茶なノルマや納期を設定して、残業せざるを得なくなるようにする行為もNGです。実際に労基に訴えて「裁量労働制」を無効にした例があるそうです。

 

 というわけで、ウチの会社の「裁量労働制」っておかしくね? って思ったら、我慢して泣き寝入りするのではなく、遠慮なく労基にチクってやりましょう。

 労基は「労働条件相談ほっとライン」を設置していますので、ガンガン訴えましょう。

 

「労働条件相談ほっとライン」を開設します

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000054880.html

【フリーダイヤル】0120-811-610 (はい! ろうどう)

           携帯電話・PHSからも利用可能

■ 開設期間: 平成26年9月1日(月)~ 平成27年3月31日(火)

■ 受付時間: 平日(月・火・木・金) 17時~22時

         土日           10時~17時

         ※ 12月6日(土)は、12時~17時

         ※ 年末・年始(12月29日~1月3日まで)は除く。

 このホットラインについては「裁量労働制」以外にも、不払い残業や、過重労働についても遠慮なく通報するべきだと思います。匿名での相談も可能ですし、悪いのは不法行為を働いているブラックな企業なんですから。

 労組に任せてもダメだと思いますし。

 

 結局のところ、今回の『契約社員に裁量労働制が適用可能』という政府の答弁書。これは法制度を杓子定規に解釈すると、契約社員にも適用が可能というだけ。しかし、実際に適用するとなると、かなりの手順を踏んで、高いハードルをクリアしなければならないわけです。

 

要するに

派遣社員への適用は法的には可能だけど、実質的にはほとんど無理に近い   という事だと思います。

 まあ、日本の労働文化はあまり裁量労働に向かないとは思いますけど、実際に裁量が任せられる職種の人は存在するわけなので、法整備は必要なのだと思います。

 後は、きちんと適切に運用できるかどうか。

 ただ、労基が常にすべての企業を監視できるわけではありませんので、ホットラインを活用し、不法行為を撲滅していくことが重要なのではないかと思います。

 あ、それと、今回の答弁書が閣議決定されたのは、野党から質問主意書が出されたらその答弁書は閣議決定されるというのがルールとなっている。ただそれだけのことです。

 別に政府が契約社員に裁量労働制を適用可能にすると、今回初めて決定を下したというわけではありません。

 アイキャッチの画像は『ぱくたそ』さんから頂いています。

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