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種子法廃止と食料安全保障


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 これまで投稿してきた種子法関係のエントリー。かなりニッチな分野であるにもかかわらず、結構反響が大きかったです。一日一万アクセスとか超えておりましたし・・・。

 で、反響が大きければそれだけ、種子法廃止反対派の目にも留まるわけで、ツイッターで様々な反論? みたいなものがありました。

 

 まあ、種子法が廃止されて不安になる気持ちも分からないでもありません。

 なので、ここは一つ一つ疑問にお答えして、不安を解消させてあげればなと思います。

 

 まずは、これ↓

『種子法廃止でコメの価格が高騰することが懸念されている。なのに業務米不足の問題を取り上げても意味がない。日本の食料安全保障を外資に握られることを考えればおにぎりの価格20%UPなど問題ではない』

 

 業務米についてですが、おにぎりの価格20%アップは大問題だと思います。

 忘れてはいけないのは、こういう商品の最終価格に転嫁されるのは、一番最後であるということです。

 その価格転嫁の手段を採る前に、店側は人件費の削減や、仕入れ値の買い叩き交渉を行っているはずです。

 それだけでは対処しきれなかったから、最後の手段として価格に転嫁せざるを得なくなった。

 そこまで店側は追い込まれているわけですよ。損失を被るのは消費者だけではありません。

 

 以前もエントリーしましたが、業務米の価格は20%程高騰しています。(これは一昨年のデータ)

 で、今後もこのような事態が続く様であれば、コメを輸入しろという声が大きくなってくる懸念があります。平成の米騒動を彷彿とさせますね。

 困ったときだけ輸入に頼る。私としてはこれが、食糧安全保障に資するとはとても思えません。

 

 次に知見を民間に渡す件。

『種子法廃止で民間のノウハウを取り入れるべきというのは問題だ。民間に行政が積み上げてきたノウハウを譲り渡すのは、国民の財産を捨てることで、民間のノウハウを取り入れることに比べたら、失うものが大きい。』

 

 行政は今まで国民の税金を投入して種子の開発をしてきたのですから、種子のノウハウは国民の共有資産のはずです。これを行政だけで独占する事の方が問題でしょう。財産を有効活用できずに、死蔵させてしまっているようなものです。

 

 また、行政、民間でノウハウを共有すると言っても権利自体は種苗法で保護されるので、日本のブランド米品種が消えてなくなってしまうわけではありません。

 

 これも前回書きましたが、行政はその知見、ノウハウを利用し、ブランド米開発競争に明け暮れています。ですが、農家にとってブランド米を生産するというのは結構リスクがあるものなのです。そのブランド米が競争に打ち勝つ事ができれば、大きな利益が得られるのかもしれませんが、負けてしまえば悲惨な結果を招きます。安値で買い叩かれるケースも有るわけで、農家の収入は安定しません。

 

 現在の日本は、人口も減っていますし、一人あたりのコメ消費量も減少傾向にあります。コメの消費量は年間8万トンずつ減っているにも関わらず、各都道府県は新興ブランドを次々と乱立させている様な状況にあります。

 これを地域に根ざした品種を改良しているとか、多様性の面で評価している人がいますが、私から言わせてもらえば非効率的だな・・・としか思えません。

 

 ここで、農家の強みとなるのが主に業務用として利用される多収米という選択肢です。民間が開発した『みつひかり』などの多収性のF1品種は種籾が高いですが、『こしひかりより』も3~4割ほど多収で、最終的な農家の利益はブランド米の『こしひかり』よりも大きくなります。

 業務米の価格が高騰している今ならばさらなる収益が見込めるでしょう。

 

 この様な状況において、農家の立場に立てば、翌年の需要を見越し、多収米でいくか、ブランド米でいくか、自由に選択できることが、農家の利益を安定させる事に繋がるのは明白だと思います。

 更に業務米の不足も解消できて、外食、中食産業、消費者も助かります。

 ですが、現状。種子法によって行政が奨励品種と定めた品種ばかりが農家に供給される状態となっており、民間の多収性の品種はなかなか販路を拡大できない状況に置かれています。

 

 このようなブランド米に偏重した種子開発を続けていると、日本の食料安全保障の根幹となる米作が崩壊してしまうことは、容易に想像できると思います。

 日本の農業を発展させるためには、農家の収益を安定させ、しっかりと儲けが出るような環境を整えなければなりません。民間の多収米という選択を狭め農家のビジネスチャンスを握りつぶしている種子法という民間参入障壁は廃止すべきです。

 

 あとは・・・種子法廃止でコメの価格が高騰する事はありません。むしろ種子法を維持した方が、上記で述べたように受給のバランスが狂って価格が上がってしまいます。

 民間の多収米の方が安いのに・・・だから業務米として利用されているのに。なぜ民間の種子が普及したら価格が高騰することになるのか。そのロジックがさっぱり分かりません。

味についても「多収米は不味い」は昔の話で、今では他のブランド米と大差ありません。よほど舌が肥えていないと見分けることは難しいかと思います。

 

 

 そもそもの種子法は戦後、民間企業がまだ種子を単独で開発できるほどの体力、技術が無かったので、行政が主導して種子開発しましょうという目的で制定されたもの。

 しかし、今現在では日本のタキイ種苗やサカタのタネが単独で種子開発できるくらいに成長しております。

 それどころか稲のゲノムを分析して、品種改良のスピードを大幅に短縮する技術も民間が保有していますし、行政が種子開発をしなければならない意味や根拠がなくなっているのが現状かと思います。

 むしろ前エントリーの様に、行政が市場の需要を無視して、各都道府県にて高いブランド米の開発競争を繰り広げてしまうという事態に・・・。

 

 ぶっちゃけて言うと、種苗品種開発のノウハウ、技術力については今や民間の方が上だと思います。

 種子法の影響範囲外の、民間企業が開発している野菜や果物の品質を見ればそれは民間企業の技術力の高さが伺えます。

 種苗法というハンデ、向かい風の中、民間品種である『みつひかり』の作付面積が拡大している点を見ても、民間企業の種子が農家や市場に評価され、受け入れられている事の証左だと思います。

 

 年間8万トンも需要が縮小しているコメ市場において、市場のニーズを無視し、ブランド米開発競争に明け暮れて、結果コメ不足を生じさせている行政に適切な種子開発能力があるとは思えません。

 種子法の役目は終了。その目的は既に達成されておりますので、民間にバトンを渡すべき時期が来たというだけの話です。

 というか、今からでも遅すぎるくらいですね。もう10年くらい前にはやっておくべきだったのではないかと思います。

 業務米不足の懸念については農水省のマンスリーレポートを見ると、かなり昔から指摘されていた事でしたので。

 

 理想を言えば、各都道府県は生産性の低いブランド米の種子開発だけではなく、民間の業務米用品種の開発ノウハウを取り入れ、安く、多収性の品種を多く開発し、日本の稲作で輸出攻勢に出れば良いのでなないでしょうか?

 海外でも日本食は人気がありますし、日本米の需要は高いと思います。

 日本国内で消費する以上に、輸出用に多くコメを生産していれば、いざという時、不作になった時でも国内でコメが不足してしまうという事態を回避しやすくなると思われます。

 ですが、コメを自由化してしまうと、輸入米が増えるんじゃないかという懸念があろうかと思いますが、私はそれで別に問題はないと思います。

 海外で日本人の味覚に合ったコメを生産できるのか?という疑問もありますし、平常時から輸入のルートを確立し、サプライチェーンを形成していれば、いざという時も輸入米で対処がしやすくなるというものです。

 

 普段は海外からのコメをシャットアウトしておいて、困ったときだけ輸入させてくれ では、ご都合主義も良いところです。平成の米騒動でも海外から大顰蹙買いましたからね。

 食料安全保障の定義を『外資がー』じゃなくて、日本人を飢えさせないためにはどうすればよいのか? に焦点を当てれば、輸出競争力のあるコメを開発し、生産量を引き上げ、同時に輸入のルートを確立しておくのが適切ではないでしょうか。

 

 今の日本の稲作は、日本国内だけを見て、減反で生産量を調整して統制している。これでは不測の事態に柔軟に対応できるとはとても思えません・・・。

 物資の供給源は多重に確保しておく、これって安全保障の基本ではないですかね。

 あと、日本産のコメが海外で普及すれば、高級なブランド米についても海外で需要が増すことになると思います。セレブ向けとかにですね。

 

 あと、遺伝子組換えについては種子法とは全く関係ないです。また、遺伝子組み換え作物は健康面においても問題ありません。医学的、科学的に根拠がありませんから。

 よくツイッターでつぶやかれている除草剤ラウンドアップの発がん性についても、ハザードとリスクを取り違えているようです。

 おなじみのモンサントガーも然り

 これらについては一回のエントリーでは説明しきれないので、別途エントリーします。

 

 とりあえず簡単にまとめると

・種子法の目的は終戦後、民間が種子を開発する体力や技術が未熟だったため行政が主導して種子の開発供給に当たることとした。

・ところが、現在では民間でも十分に種子を開発する体力と技術が備わってきている。それどころかそのノウハウは行政を上回っている。(種子法という障壁、向かい風がある中民間の種子がシェアを拡大しているのがその証拠)

・年8万トンずつコメ需要が縮小しているにも関わらずニーズを読み違えてコメ不足を生じさせている行政に、適切な種子開発の能力が備わっているとは思えない。

・行政の種子開発は税金を投入して行われていた、いわば国民共有の財産。それを行政の中で死蔵させてしまうのは日本全体の損失となる。

・種子法の役目はもう終了した。日本は行政から民間企業にさっさとバトンを渡すべき。

 

ということなのかなと思います。

 アイキャッチの画像は『ぱくたそ』さんから頂いています。

 


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