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民間企業はモンサントだけじゃないんですけど、農業競争力強化支援法には、行政がこれまで開発していた種苗についての知見を民間企業に提供するという文言があります。
農業競争力強化支援法の8条の4項
「種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること。」
この一文で
「安倍は外資に日本のコメを売り渡すつもりだ」 とか
「主権を放棄した」
とか言われていますけど、
前回のエントリーで述べたように。
・行政の種子開発の方向性がズレてきている
市場、消費者は安い業務用のコメを求めているのに、行政は高いブランド米の種子を開発し続けてきたので、需要と供給のミスマッチが生じ、コメの価格を高騰させてしまった。
・行政の種子開発の知見、ノウハウは我々の税金で開発されたもの。
要は国民全員の共有財産。行政が民間に提供するのは当然のこと。
・種子法の役目はもう果たされた
種子法は民間がまだ種子開発のノウハウや体力が無かったため、民間が育つまでは、行政が種子開発を行うという目的で制定された。現在ではサカタのタネやタキイ種苗などが独自で種子開発を出来るだけの体力、技術力を獲得しているため、既に種子法の存在意義はない。
それどころか、民間企業の新規参入障壁となり、民間企業の種子開発を阻害する状況を作っている。
・民間企業の方が種子開発のレベル、技術力は高い
というわけなので、種子法については廃止しても問題ないどころか、廃止する事の方がメリットが大きいかと思います。私としてはなんでもっと早く廃止しなかったのかと思う程ですけどね。
それでも民間にこれまで行政が開発して培ってきた知見が流出するのは我慢ならない・・・と考える人は多いと思います。
ですが、たとえ知見が民間に渡ったとしても、民間企業がその知見を使って、行政を超えるモノを開発しなければ市場に認められる事はありません。
適当に「こしひかり」や「あきたこまち」などのブランド米をかけ合わせて、新品種だと品種登録したとしても、その新品種が親の品種よりも優れた特性がない限り、農家や消費者は「こしひかり」や「あきたこまち」を選びます。
明らかな優位性が無ければブランド力のある「こしひかり」や「あきたこまち」の方が売れるに決まっていますから。
行政は知見を提供するが、権利は種苗法に守られているので、別に種子法廃止後も普通に「こしひかり」や「あきたこまち」などのブランド米種子を生産し供給することは可能です。
これはまあ、市場原理ですね。
良いものは売れるし悪いものは売れない ただそれだけのことです。
種子法廃止で「こしひかり」や「あきたこまち」などの日本のブランド米が外資によって駆逐されてしまう!
と嘆いている人がいますが、もしそれが本当ならば、今まで行政は劣悪な種子を開発し、税金を投入して無理やり農家に奨励品種の種子を買わせていた。
という事になってしまいますよ。
そんな行政を必死に守ることが日本の国益になるのですか? また、食料安全保障に資することになるのですか?
まあ、実際には私も行政が開発した品種はそんな劣悪なものではないと思いますので、そうそう簡単にモンサントなどに駆逐されてしまう・・・なんて事にはならないと思います。もっとも、市場ニーズを無視した種子開発を今後も続けていたらどうなるか分かりませんけどね。
しかしながら、私は別に役立たずの行政は潰れてしまえ! とは思って無くて、今回の趣旨法廃止により、行政が危機感を持って民間と協力して市場のニーズを見越した種子開発にシフトして頂ければ万々歳です。
昨年、安倍政権は農協改革にも乗り出しておりますが、その農協もさすがに危機感を感じたのか、様々な改革を打ち出そうとしています。生き残れるかどうかが掛かってきてるので、そりゃ必死にもなりますよね。
これがその一例ですが、
JA全農が香港に現地法人 輸出拡大へ3月設立 産経新聞 2018.1.29
http://www.sankei.com/economy/news/180129/ecn1801290031-n1.html
『 全国農業協同組合連合会(JA全農)は29日、農産品のアジア向け輸出拡大を目指し、3月に香港に現地法人を設立すると明らかにした。和食ブームを追い風にレストランやスーパーでの需要を見込む。将来的には香港を拠点に周辺国にも販路を広げる予定だ。まず3人の職員を配置し、和牛や果物、コメなど現地で人気の農産品を中心に売り込む。香港は日本にとって農林水産物・食品の最大の輸出先。』
JA全農が香港に現地法人を作って・・・まあ言うなれば農協が輸出ブローカーになるって事ですね。
法人ならともかく、個人の農家にとって農作物を輸出するのはかなりハードルが高い、ですからそれをサポートする組織を立ち上げる。これは非常に有意義な事だと思います。
私はまあ、これまで農協、JA全農を批判したりしてました。しかし、自らを変えようとして改善策を講じていく、その姿勢については批判するつもりはありません。
JAがこの調子で、元の利権体質から脱却して、日本の国益に適う組織に変貌するのであれば歓迎致します。
これは種子開発も同様です。別に行政が悪い訳ではないです。種子法の下、税金が投入されて、市場競争とは無縁の環境に置かれてしまえば、どんな組織でも方向性を失ってしまうのは当然事かと思います。
悪いのは種子法。行政は今回の件を契機として、これまでの種子開発を見直し、競争力のある種子を開発できる体勢を構築していただきたいと思います。
延いてはそれが、外資、モンサントを排除する力になると思いますし、食料安全保障の面においてもプラスに働くことになるでしょう。
(巷で目にする食料安全保障の定義が何なのかが少々曖昧ですけどね)
ですが、このまま種子法を温存し、市場競争から隔離された環境に行政を置いたままにすると、民間と行政の種子開発レベルの格差がさらに拡大してしまう懸念があります。
それこそ日本のタネを外資に支配される要因になってしまうかもしれません。
行政を守れば種子を守れるというわけではありません。
日本の民間種苗メーカーは優秀です。これらの民間企業と行政がタッグを組むことは悪いことではないと思いますよ。
モンサントガーとか言ってても仕方ないです。
良いものは売れる悪いものは売れない ただそれだけのことなので、
どうすれば競争力のある種子を開発できる環境を実現できるのか? それを第一に考えるべきではないでしょうか。
まあ、私としては別にモンサントと組んでも良いとは思っています。モンサントの種子が日本に普及するということは、それだけ品質的に優れているという事ですからね。それがなぜ日本の国益を害することになるのか・・・そのロジックが良く分かりませんね。
外資と国内企業と行政を区別する必要って・・・あるのかな?
今の世の中、右を見ても左を見ても、外資だらけなんですが・・・。
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