広告

 TPPから一旦抜けたアメリカ、ですがトランプ大統領がTPPに復帰するような発言をした模様です。TPPから抜け出ても二国間FTAで実質TPPに参加したような体にするのかなと思っていましたが、復帰を示唆するとは驚きです。

 まあ、まだ事の真意は分からないんですけどね。

トランプ大統領、TPP残留示唆「いい協定得られれば」 2018/1/26 朝日新聞デジタル

https://www.asahi.com/articles/ASL1V1QT2L1VUHBI001.html

『 トランプ米大統領は25日、米CNBCテレビのインタビューで、米国が離脱を表明した環太平洋経済連携協定(TPP)について、「もし相当良い協定ができるなら、私はTPPにオープンだ」と話し、再交渉でより有利な条件が得られればTPPに復帰する可能性を示唆した。トランプ氏がTPP復帰の可能性に言及するのは初めて。(後略)』

 

 そこで改めて、ツイッターにて『TPP』で検索してみたのですが・・・未だにISD条項が~とか、ラチェットが~とか言ってる人がボロボロと出てきて正直頭を抱えてしまいました。

 こんな使い古されたTPP反対論がまだ生き残っていたのですね。

 マジでゾンビですわ。

 

 というわけなので、旧ブログで書いていたISD条項とラチェット条項について、少し手を加えて再掲致します。

(リンクが切れていたりしてますので)

 

 とりあえず、ISD条項とはなにか?ですが、ある国に投資をした外国企業が、その国の法改正、法規制により不利益、損失をかぶってしまった場合、その企業が国を訴えて賠償金を請求することができる制度です。

 途上国など、法整備があまり進んでない国に対しては、上記のような投資リスクが付きまとうため、海外企業はなかなか投資に踏み切ることができません。しかしISDがあれば、投資をして不利益を被ったとしても国を訴える事ができますので、安心して投資ができます。

 つまり、外資企業が投資をする際の保険の様な役割を果たす制度です。

 

 ただ、ISDについては今まで企業から訴訟を受けることで国の法律を変えざるを得なくなり国の制度そのものが変わってしまうという「噂」がまことしやかに囁かれていたために

国柄をも壊してしまう恐ろしい制度

とか

毒素条項だ

 

 とか、言われて批判されていました。

 ですが、TPPのISD条項の中身を見ると・・・


外務省 国家と投資家の間の紛争解決国家と投資家の間の紛争解決(ISDS)手続の概要 より


 投資受け入れ国(訴えられた国)の法令や政策の変更を命じる事はできないとなっているので、ISDに国の形、国柄を変える力はない事が分かります。

つまり、とある国が急に制度、法律を変えて投資していた企業が被害を被った。その場合に賠償金を支払ってそれで終了。これがISDの本当の姿です。

ま、法整備が行き届いている日本にとっては、恐れる必要はありませんね。

 

また、ISDには迂回訴訟が存在します。

現在日本には東南アジア各国とEPAを締結していますが、その中に既にISD条項は入っています

例えばアメリカの会社がマレーシアに子会社を設立(または、企業を買収)、その企業を経由して日本に投資を行ったところ、日本の法改正によりその企業が不利益を被った場合、アメリカの会社はマレーシアの会社を経由して日本に訴訟を仕掛けることが可能です。

 

 実際にその様な例があります。

 有名なのはフィリップ・モリスの訴訟でしょうか。

 フィリップ・モリスはアメリカの有名なタバコメーカーなのですが、オーストラリアの法規制に対して香港の子会社から訴訟を起こしました。

 アメリカとオーストラリアはISD条項を締結しておりません。ところが、オーストラリアと香港はISDを締結してしまっているため、このような迂回訴訟が可能となりました。

 つまり、TPPに入らなければISDによる訴訟のリスクを回避できるというわけではないのです。

 

 ちなみに日本は20カ国以上の国とISD条項を締結しています。

 ですから、今でもアメリカの企業が日本を提訴しようと思えばできないことはないのですが、日本は未だISD条項に則って訴訟を受けたことがありません。

 TPPでISD条項を締結したとして、果たして訴訟リスクはそれほど跳ね上がるものなのでしょうか?

 

 先程もいいましたが、ISDは先進国にはほとんど悪影響はありません。それよりも無法者の途上国から不利益を被るリスクを回避できますので、日本にとってはメリットの方が大きいです。

 ISDで日本の国体が破壊される!と危機を煽っていたTPP芸人さんはコレをどう見るのでしょうか。

 まあ自分も昔、踊らされていたのであまり偉そうなことは言えませんけど。

 

次にラチェット条項

ラチェットとは一度回転すると元に戻らない歯車の事で、貿易協定で言うと、一度自由化した項目は元には戻さない、再び規制を強化する方向へは動かさないという事になります。

そのラチェット条項について以下のようなニュースがありました。

TPP交渉、規制の再強化防止で合意  2013/11/23 日本経済新聞

http://www.nikkei.com/article/DGXNZO63025280T21C13A1EE8000/

『TPP交渉で議論する21分野29章のうち「越境サービス」分野で合意する見通しがたった。導入するのは「ラチェット条項」と呼ぶ仕組みで、規制強化につながる法改正は原則禁じることを約束する。自国産業を守るためいきなり外資の出店規制を厳しくするなどの変更ができなくなる。  適用範囲は企業活動に関連する分野にとどまり、食や人命の安全に関わる規制強化は含めないことも決めた。(後略)』

 TPPにラチェットが追加されたため、これはヤバイ!と騒ぐのは結構なのですが、中身をよく見てください。

 

>規制強化につながる法改正は原則禁じることを約束する。

 『原則』ということなので例外規定はいくつか用意されているのではないでしょうか。

 逃げ道はあるということです。

 杓子定規に例外は認めないってワケでは無いです。

 投資した企業にとっても投資先の国がボロボロになったら困ると思いますので。

 

>自国産業を守るためいきなり外資の出店規制を厳しくするなどの変更ができなくなる。

 これは現状の国際ルールでもダメでしょう。あたりまえのことだと思います。

 

>適用範囲は企業活動に関連する分野にとどまり、食や人命の安全に関わる規制強化は含めないことも決めた。

 多分ラチェット条項で一番懸念していたのは食や人命に関わる部分、これだと思います。

 しかしながら、食や人命に関わる部分はラチェット条項から除外されて、適用範囲が「企業活動に関連する分野」にとどまるということに・・・要するにラチェとが適用されるのは企業間のやり取りや、投資などに限定されるという事です。

 これではかなり適用範囲が狭くなりますね。

 庶民にはほとんど関係ないと思います。

 

 昔はラチェット条項について、問答無用ですべての項目に適用されると考えていたのですが、そうでもなく、ラチェット条項もISDと同様に外資企業が法整備の行き届いていない途上国へ投資する際の「保険」の意味合いが強いですね。

 

 要するにISD条項もラチェット条項も法整備が行き届いている日本においてリスクは小さく、むしろ日本企業が法整備が行き届いていない途上国に投資をする際に、いざという時の『保険』の意味合いで必要不可欠なモノという事だと言うことです。

 ならば途上国は不利となる条項なのか? というと、そういう訳ではなく、ISD条項、ラチェット条項があれば、海外企業の誘致をしやすくなるというメリットが発生します。

 ただ単にISDが~とか、ラチェットが~と吹き上がるのではなく、その中身や制度の意義や目的をきちんと理解していただきたいと思います。

よろしければクリックをお願いしますm(_ _)m

広告