原発・エネルギー問題 政治

汚染水ガーな方へのカウンタートークまとめ

福島原発の処理水、海洋放出決定

菅首相は13日に福島原発の処理水を海洋放出することを決定しました。

菅首相「アンダーコントロールと矛盾せず」 処理水海洋放出決定
https://mainichi.jp/articles/20210413/k00/00m/010/097000c


処理水はタンクに貯めておくには限界があるので、海洋放出する以外に手はなかったのですが、選挙にネガティブな影響がある(野党、マスコミがギャーギャー煩い)ためなかなか決断できずにいたわけなんですが、菅さんやってくれました。

これでやっと東北、福島の復興へ大きく前進できたと思いますので、素直にこの決断を評価したいと思います。


しかしながら、今後科学知識ゼロのマスコミや野党なんかが、汚染水ガー!と騒いで東北、福島の風評被害を拡大するよう動いてくると思いますので、自分なりに汚染水ガーな方たちへのカウンタートークをまとめてみました。

 

 

1.トリチウムは危険?

放射性物質と聞くと、予備知識のない方はちょっと身構えてしまうかもしれませんが、トリチウムって要するに水素です。

普通の水素は陽子1個だけの原子核で構成されているのですが、トリチウムはそれに中性子が2個くっついて、陽子1個、中性子2個の原子核を持っています。

このトリチウム(三重水素)は原子核的に不安定なので、ベータ線を放出し崩壊してヘリウム3に変わります。

このベータ線がいわゆる放射線なわけですが、トリチウムが放出するベータ線は他の放射性核種よりも格段に弱いです。

トリチウムの性質などについて (多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会資料)
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/008_02_02.pdf


トリチウムの出すベータ線が人体に与える影響はカリウム40の344分の1、セシウム137の722分の1でしかありません。

紙一枚透過することができないくらいの弱さですので、トリチウムによる外部被ばくはまず考えられないですね。


内部被ばくについても特に問題はないです。
というのも、カリウムの放射性同位体であるカリウム40は、体重60キログラムの人間に約4000ベクレル存在していると言われています。

もともと体内にトリチウムの344倍も人体に影響を与えるカリウム40が4000ベクレルもあるわけですから、トリチウムを多少摂取したからといって危険な状態になる事はないでしょう。

少量のトリチウムでもヤバイというのならもう既にカリウム40の影響でみんな全滅してます。

それにトリチウムは水という形で存在していますので、汗や尿などで体外に出ていきやすいです。

 

2.放射線は細胞の遺伝子を傷つける 怖い

私も放射線は人体に全く影響がないですよとは言いません。

放射能の影響として真っ先に思いつくのは発がんだと思いますが、ではその放射線による発癌のメカニズムについて説明してみましょう。

まず放射線が細胞内の水に当たると、水の分子がイオン化され、活性酸素(ヒドロキシルラジカル)が発生します。

この活性酸素は細胞内のDNAと結合し、DNAを損傷。DNAが損傷した細胞すべてがガン化するわけではないですが、一部がガン化してしまいます。

ガン化のプロセス

放射線が細胞内の水分をイオン化、活性酸素(ヒドロキシルラジカル)が発生
  ↓
活性酸素が細胞のDNAを破壊
  ↓
細胞がガン化

しかしながら、先程述べたように地球上の生物は常に放射線にさらされて進化してきましたので、生物の細胞が放射線に全くの無力・・・なわけがありません。

もしそうならとっくの昔に滅びています。

 

生物には以下のような放射線に対する自己防衛機能があります。


自己防衛機能

①DNAの自己修復
 DNAは自己修復し元の状態に戻る機能を備えている
一つの細胞が一日に受けるDNA損傷→修復の頻度は約5万~50万回

②DNAの冗長性
 実はDNAで人間のからだを形作る上で本当に必要となる部分は、全体の数%程度しかない。残りはダミーか複製(バックアップ)

③細胞の自殺(アポトーシス)
 細胞は細胞分裂の際、DNAのコピーミスがあったり、なんらかの異常(ウイルス感染、機能欠損)があった場合、もしくはガン化した場合、自ら自殺(アポトーシス)する機能を持っている
アポトーシスが機能不全になった細胞がガン細胞として増殖する

①~③をくぐり抜けてきた細胞のみがガン細胞となるが、まだ最後の関門、免疫機能が残っています。

免疫機能

 細胞がガン化しても免疫細胞(キラーT細胞)などに食べられたり、破壊されてしまうと増殖することができない

一般に一日に約5000個ほどのがん細胞が発生している
ガンとは意外に身近にあるもので、発病しないのは免疫機能のおかげ
免疫力が処理可能ながん細胞のキャパを超えてしまった時に初めてガンが進行する

つまり、ガンになりたくなければ、数ベクレル程度の放射能を怖がり、ビクビクするのではなくて、睡眠を十分にとって、ストレスのない規則正しい生活を送り、免疫力を向上させるのがいいと思います。

もちろん放射線を短期間に大量に浴びてしまえばヤバいです。ですが、海洋で十分に希釈されたトリチウムによって人体に悪影響を及ぼすほどの放射線を浴びてしまうなんてことは考えにくいと思います。

 

3.トリチウムを海洋放出したら海が汚染される?

いくら人体、生物への影響が軽微だからと言って、トリチウムを海に放出するのは良くない。環境を汚染することに変わりない。
とツイッターでつぶやいている人をちらっと見かけましたが、

ご安心ください。


もともと自然界には100~130京ベクレルものトリチウムが存在しています。

京と言われてもピンとこないかもしれないので、130京を数字で表してみました。

うーん。桁数すごいですね。

さらにトリチウムは年間7京ベクレル自然に生成されておりますので、年間数十兆ベクレルのトリチウム処理水を海洋に放出したところで、自然界に多少の影響をも与えることはできません。

もともとトリチウムは大量に海に存在していますので。


海洋中に存在している放射性核種はトリチウムだけではありません。

ウラン(238U)、カリウム(40K)、炭素(14C)、ルビジウム(87Rb)などの放射性同位体がトリチウムよりも多く存在しています。(グラフ中の3Hがトリチウムです)
(ちなみにPは千兆倍)

海洋における放射性核種の分布と変遷
https://www.kaiseiken.or.jp/publish/reports/lib/2016_22_02.pdf

カリウム40とか、トリチウムの何倍あるんだろうか・・・このグラフ注意して欲しいのは縦軸が対数になっていますので、棒グラフの長さでリニアに比較できません。だいたい1万倍以上ですかね。1000000京ベクレルくらい。カリウム40は海水1リットルに約12.1ベクレル含まれているそうです。1ベクレルでも駄目だって言ってたら海水浴もできないし、海産物なんかとてもじゃないけど食べられませんね。

 

 

4.安全だというのなら飲んでみろ?

ツイッター見ていると必ず飲めって言っている人が出てくるんですが、

すでに2011年に当時の園田政務官がごくごく飲んでるんですよね。
それで特に健康被害があったという話は聞いていません。

園田政務官、原発の浄化水飲む 「飲んだら」と言われ
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201110310428.html

飲んだら納得してくれるんじゃなかったんですかね?

というか、そもそも処理水は飲用に調整されたものではありませんよね。雑菌とかあると思いますし。
自分が飲んでも安全であるものしか放出してはいけないというのでしたら、ご自分の家庭から排出される家庭排水をもちろん飲めるんですよね? って言い返してあげたらどんな反応するでしょうね。

「いや、家庭排水は浄水場で処理するから」

って、言ってくるかもしれませんが、それ処理水と一緒ですよねって話。


あと、水道水にもトリチウムは微量に含まれています。
海洋放出されたトリチウム処理水は海で薄まって水道水中に含まれるトリチウム濃度と同程度になります。

つまり、我々は普段からトリチウム水飲んでるんですよね。


さらに、雨に含まれているトリチウムは今でこそ0.5ベクレル/Lの水準まで下がっていますが、大気中での核実験がガンガン行われていた1960年代は、一時期1リットル当たりのトリチウム濃度が100ベクレルを超えていました。(それでも基準値以下なんですが)

当時このトリチウム水をごくごく飲んでいた世代が、今の日本の平均寿命を絶賛押し上げている事を考えれば、トリチウムが人体に与える影響も推し量れるんじゃないかなと思います。

環境中のトリチウム測定について
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/011_04_02.pdf

 

5.いやトリチウムじゃなく他の放射性核種が問題なんだ

以下の資料は東電が多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会に提出した資料の一部なのですが、トリチウム以外の主要三核種(セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90)は処理後にND…、つまり検出限界以下にまで除去されている事が分かるかと思います。

あと、主要三核種以外の放射性核種についても1ベクレル/L以下の基準値以下まで減らされています。
(トリチウムを除去する技術は確立されていないので除去できない)

多核種除去設備等処理水の性状について (多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会資料 2018年10月1日)
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/010_03_03.pdf


つまり、トリチウム以外の放射性核種はほぼ無いと言えるレベルまで除去されています。

 

 

6.ほかの国が納得しない

いや、世界中の国でがんがん放出されています。
それなのに日本だけ、福島だけダメだというのは意味が分かりません。

トリチウムの性質などについて (多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会資料)
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/008_02_02.pdf


韓国、中国が批判しているようですが、韓国だって年間130兆ベクレルほど放出していますし、中国は昔大気圏中で核実験ボコボコやって黄砂でその放射性物質を世界中にばらまいているのになと・・・

それに上でも説明しましたが何もしなくても年間7京ベクレルのトリチウムが自然に生成されて雨などで地上や海上に降り注いでいるわけでして。

ですから、良識ある国は今回の福島の処理水海洋放出については一定の理解を示しております。
批判しているのはアレな国だけです。

 

7.海洋放出で風評被害が拡大する

風評被害が起こる原因は海洋放出ではなくて(実際震災前は普通に海洋放出されていたが問題なかった)、処理水やトリチウムに対する正しい知識を持つ人が少数であるという事だと思います。

実際、 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会での一般アンケートの資料を見ると

・トリチウムの出す放射線は非常に弱く人体に与える影響は微弱
・トリチウムは自然界に大量に存在する
・処理水はトリチウム以外の核種は除去されている
・トリチウムは世界中の原子力発電所で海洋放出されている

上記の事について知っているかという問いに、知っていると答えた人は20~30%程度でした。

本来ならこれ、マスコミが率先して報道するべきで、それで正しい知識を国民が共有できれば風評被害の懸念などほとんどなかったのだろうと思います。

マスメディアの怠慢の結果ですよこれ。

政府も広報はしていますが、一般の人は政府の資料なんか読みにいかないです。

でもまあ、自分たちにできることは少しでも多くの人に正しい知識を広める事と、福島、東北産の農作物や海産物を食べて応援するという事だけですかね。

ま、小さなことからコツコツと地道にやっていきたいと思います。

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