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水道法改正関連⑤ ボリビアの水紛争って民営化の失敗例として適切か?

ボリビアの水紛争ってなんぞ?

 水道民営化反対意見の中でもメジャーなのがボリビアの水紛争だと思います。

 その水紛争とは、

 1999-2000年にかけてボリビアのコチャバンバで発生した、水道事業の民営化と値上げに対して民衆が起こした大規模な反対運動です。

 数十名が負傷し、6名が死亡するという惨事でした。

 この記事に詳細が書いていますので、参考まで (記事中に松山市の水道料金デマが書かれているのはご愛敬w)
 

ボリビアの水道民営化で何が起こったのかというと

ボリビア(コチャバンバ)水紛争

・ベクテル社がボリビアから水道事業の権利を買収
・水道料金が2倍 (記事によると国民の平均収入の1/3?)
・雨水を溜めたバケツに対しても料金を請求
・民営化撤回後、ベクテル社がボリビアに対して違約金として2500万ドルを請求(実際には和解、放棄)

※これはあくまで上記の記事に書かれている内容です

 さて、これだけを見ると

 ベクテルはとんでもない会社だ
 水道事業の民営化なんてとんでもない

 といった感想を持つのも仕方ないのかもしれませんが、これはボリビアの水紛争の一部分だけを切り取ったものであり、かなり一方的にしか状況を見れていません。

 これって水道事業の民営化の問題として扱うのはちょっと違うのではないかと思うんですよね。

コチャバンバの状況を整理

 当時のコチャバンバは人口が急激に増加していて、そのため増えた水需要に対してSEMAPA(上下水道公社)のサービスが受けられる人口は57%ほどしかなかったらしい。しかもその5~10%は水道料金未払い・・・

 断水、漏水は当たり前で、一般の住民は雨水を溜めたり、井戸を掘ったり、民間の水業者から水を買うのが普通で、公営の水道はあってないようなものだったそうな。

 しかもそのSEMAPAは3000万米ドルの借金を抱えていて、事実上破綻状態でありながら、上下水道の整備をしなければならない状況に追い込まれていました。

 こんな状況で、政府はコチャバンバの水需要に応えるためにミシクニダムの建設を計画。

 でも、カネがない・・・

 じゃあ、どうするか という話になり、世界銀行から融資を受けることになったわけですね

世界銀行の融資の条件

 ボリビアは世界銀行に2500万ドルを貸してと頼みましたが、一度却下されています。

 まあ、ボリビアの経済力を考えると返済される見込みがないので当然といえば当然なのですが・・・

 そこで、世界銀行は公営の上下水道公社であるSEMAPAを民営化し、その運営権利を担保にすることを条件に融資を許可します。

 で、その運営権がトゥナリ社(ベクテルとユナイテッド・ユーティリティーズの合弁会社)に売却、これによりSEMAPAが民営化、ボリビアは世界銀行からの融資を受けることに成功。

民営化後の問題 → 紛争勃発

 トゥナリ社は民営化後水道料金を10~200%の幅で値上げを実施。

 上で紹介した記事には2倍に値上げって書かれていますけど、実際には最貧層に10%、富裕層に対して200%の値上げ、、、と階級別に値上げ幅を変えていたようです。

 ですが、それでも貧困層にはとても払える額ではなかったそうで、元からどれだけ水道料金高かったの? って話です。

 そして、60%以上を占める貧困層はそもそも水道を使わないので、トゥナリ社はいつまでたっても投資金額を回収できる見込みがない・・・、というわけで例の雨水や民間の水売りにまで料金を課すという強硬手段に出る。

 水源の権利はすべてわが社にあるというボリビア政府との契約を盾に強気にでたわけですね。

 普通に考えてこんな権利を民間企業に売り渡しちゃったのは、ボリビア政府アホですかとしか言えないのですが、当時コチャバンバの水道事業の入札に手を挙げてくれたのがトゥナリ社しかおらず、立場の弱いボリビア政府は多少不利な条件でも飲まざるを得ないという事情があったようです。

 で、これはさすがに横暴だと住民が立ち上がり、抗議反対デモが暴動に発展した・・・というのがコチャバンバの水紛争の概要ですね。

 この抗議を受けてトゥナリ社は水道事業を放棄せざるを得なくなり、その損失金2500万ドルの支払いを求めて国際紛争解決センター(TPPのISD条項みたいなやつ)に申し立てを行うが、

 結局ボリビア政府と和解してトゥナリ社(ベクテル社)は2500万ドルの損失を放棄することで合意。

 冒頭で紹介した記事ではベクテルが無理やりボリビアから2500万ドルを毟り取ったかのように書かれていますが、実際には和解していますね。(あのサイト、ちょいちょい嘘がまじってるよね)

結局のところ、これって『民営化』の問題なの?

 以上を踏まえてちょっと考えていただきたいのですが、これって水道事業の『民営化』の問題なのでしょうか?

 ボリビア政府は水道事業を民営化したくて民営化したのですはなく、ダムを建設する資金を調達するためにやむなく民営化の条件を飲んだだけですよね。

 で、トゥナリ社からも足元を見られてかなり先方に有利な条件で契約をさせられて、このような惨事に発展した・・・

 ・・・ってこれ、民営化の問題というより、ボリビアという国の経済力、財政、貧困に問題があると言えるんじゃないでしょうか?

 果たして、現在の日本においてボリビアと同じ様な問題が発生しえるでしょうか?

 日本はIMFや世界銀行からお金を融資してもらわないと立ち回れないような窮地に陥っていますか?

 日本は対外資産世界一の国なのに?

 私としてはこの問題、トゥナリ社(ベクテル)や世界銀行に全く非はなく、正当だ! なんて言うつもりは毛頭ありません。むしろ契約上そうなっているとはいえやりすぎだと、ひどすぎると思っているくらいです。
(ベクテル社はこの失敗でかなりの損失を出していますが・・・)

 ですが、この問題を「水道事業民営化そのものの問題」として扱うのは、あまりに的を外し過ぎている、というのが私の考えです。

 ほとんどこじ付けに近いですね。

 まあ、この件で日本が参考にするべきは、民間企業との契約は双方遺恨を残さないように、しっかりと練り上げてねってくらいでしょうか・・・

まとめ

  • ボリビア(コチャバンバ)の水紛争自体は本当に起こったこと
  • その問題が起こった背景には、ボリビアの貧しい経済と財政、貧困問題がある
  • この件を「水道事業民営化」の問題として扱うのは、日本とボリビアの経済背景を考えるに適切ではない

 ※今回記事タイトルに「ファクトチェック」を付けなかったのはボリビア(コチャバンバ)の水紛争自体は本当に起こったことなので、本当に重要なのはこの惨事を踏まえて日本ではどのように対応するか? だと思います。(分類上記事カテゴリ上はファクトチェックにしています)

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