政府が特定技能2号の業種枠拡大を検討
在留外国人「特定技能2号」の対象分野追加を検討 古川法相
NHK 2021年11月19日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211119/k10013354131000.html
『外国人材の受け入れ拡大に向けて導入された「特定技能」をめぐり、古川法務大臣は閣議のあとの記者会見で、在留期間の更新に上限がなく、配偶者などの帯同が認められる「特定技能2号」について、対象分野の追加を検討する考えを示しました。(後略)』
移民政策を行っていない日本では外国人労働者の単純労働は原則として禁止されていますが、それでは国内で深刻化する労働力不足を解消できないため、2019年に新設されたのが『特定技能』です。
対象の業種は以下の14業種
建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、介護、ビルクリーニング、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、産業機械製造業、電気電子情報関連産業
ただし、14業種は特定技能1号のみで、特定技能2号については建設業、造船・船用工業のみです。
今回政府が検討しているのは特定技能2号の業種を1号と同じ14業種に拡大するというものです。
特定技能とはなんぞや?
ツイッターを見ていると良く特定技能と技能実習を混同されている方を見かけますが、両者は全くの別物です。
まず、技能実習は外国の方に日本で働きながら技術を学び、その技術を母国に持ち帰ることで経済発展に協力するという国際貢献を目的にした制度です。
まあ、実際に国際貢献になっているのかどうかについては疑問な点が多いのですが、本稿の論点とは異なりますのでここでは割愛します。
一応法律には「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と書かれています。
一方で、特定技能とは外国の方を労働者として受け入れる在留資格、就労資格の様なものです。技能実習のような国際貢献ではなくて、直接的な労働力の確保が目的ですね。
特定技能1号と2号の違い
その特定技能は先述した通り、1号と2号に区別されています。
特定技能1号は特定14種の産業分野において、特別な育成や訓練を受けることなくすぐに一定の業務をこなせる水準の外国人に向けた在留資格で、日本語のスキルに加えて、仕事に関する知識や経験に関する資格試験を受けて合格する必要があります。
ただ、技能実習2号を良好に修了することでも特定技能1号の資格は得られますので、現在特定技能1号に認定されている外国人の方のほとんどが後者の技能実習2号修了パターンだと思います。
特定技能1号の在留期間は通算5年で家族の帯同は認められていません。
ちなみに特定技能の試験を実施している国は日本との二か国間の協力覚書を締結していなければならないので、限定されています。
現在のところ以下の12か国です。※2021年5月25日時点
フィリピン カンボジア ネパール ミャンマー モンゴル スリランカ インドネシア ベトナム バングラデシュ ウズベキスタン パキスタン タイ インド
皆さんが懸念されている中国では試験は実施されていません。
※特定技能に関する二国間の協力覚書 https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri05_00021.html
次に特定技能2号ですが、こちらはそれぞれの分野で職種ごとに定められた特定技能2号評価試験に合格し,監督者として一定の実務経験を積むことで資格を獲得できます。
ちなみにこの2号の試験ですが、2021年度から開始されていますが、公表されている6月末時点で認定者はゼロ人です。
まだ試験開始して3か月しか経ってないのですが、結構合格ハードルは高そうですね・・・
で、この特定技能2号は1号とは異なり、滞在期間の無期限更新が可能です。(1号は最長5年)
さらに家族の帯同が可能で、その家族も週28時間以内であれば就労が可能です。
特定技能制度は移民政策なのか?
とりあえず、最初に断っておきますが、私は移民政策を推進したいわけではありません。あしからず。
で、巷では今回の特定技能2号の業種を1号と同じ14種に拡大する案について、『事実上の移民政策だ』との批判の声が上がっています。
例えばこの記事ですね
岸田首相、大丈夫か!? 「外国人就労拡大」急浮上で“移民解禁”大論争 欧州では治安悪化と行政負担増 門田隆将氏「衆院選で国民に問うてない」
夕刊フジ 2021年11月21日
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/211121/pol2111210001-n1.html
『岸田文雄政権下で「外国人労働者拡大の動き」が急浮上した。外国人の在留資格「特定技能」のうち、長期在留や家族の帯同が可能な「2号」について、受け入れ拡大を検討しているというのだ。日経新聞は、人材不足が深刻な業種14分野すべてで「在留期限をなくす方向で調整している」と報じた。欧州諸国では、労働力不足解消のため大量の移民を受け入れたところ、「国のかたち」が大きく変わり、さまざまな社会問題を引き起こしている。この件は、自民党総裁選でも、衆院選でも大きな争点とはなっていないが、岸田首相は「大移民政策」にかじを切るのか。(後略)』
ぶっちゃけ結論から言うと、特定技能制度は移民政策ではありません。それどころか、移民政策に舵を取らないための制度だと思います。
というのも、、、
移民反対だ、外国人はだめだと言っても、もうすでに日本国内では多数の外国人が働いています。
このような状況で、移民もダメ、就労を認める様な資格もダメだとなったら、外国人を国内から強制排除しなければならなくなります。そんなことをしたら人権、人道的にアウトですし、国際的な非難の対象になってしまいます。日本は差別国家だいうレッテルを張られても仕方がなくなりますね。
それとも、特定技能制度がなかった昔のようにグレーな基準で外国人を働かせますか?
そちらの方が犯罪の温床になりそうで怖いですよ。
我々が移民政策に反対しているのは、移民が引き起こす様々な問題があるためです。
その最たるものは治安の悪化ですよね?
ですが、特定技能制度は技能実習2号を良好に修了(犯罪を犯したり、失踪したりしたらもちろんダメ)するか、試験に合格しなければ日本に在留して働くことができないわけで、このような優秀な外国の方が犯罪を犯す可能性はかなり低くなるのではないでしょうか? (可能性はゼロだとは言いませんよ。でもそれは日本人でも同様でしょう)
私としては、国が明確な基準を定める外国人の就労在留資格がある方が、グレーゾーンで運用するよりも全然良いと思います。
犯罪、治安悪化の抑制になります。
要するに、特定技能制度は外国人の労働者を適切に運用管理するための制度というわけです。
これのどこが移民政策なのでしょうか? 規制の緩和というよりも規制の強化の方だと思います。
永住権を得られるキャリアパスは作っておくべき
それでも特定技能2号の枠を拡大する必要はないんじゃないかという意見もあるかもしれませんが、私は外国人が永住権を得られる道、キャリアパスはきちんと作っておくべきだと思います。
なぜか?
それは優秀な人材が集まらないからです。
いくら日本で頑張って働いても永住権を得られる望みがない、家族を呼び寄せられないのであれば、日本で働くモチベーションを持ちようがありません。
結果、優秀な人材が集まらず、またモチベーションの低下から犯罪に走る・・・という傾向が強くなると思うんですよ。
外国人を排除か? 移民受け入れか?
という極端な二者択一ではなくて、外国人労働者とどう向き合って日本経済を発展させていくか? を考えるべきだと思うんですよね。
もうすでに日本の経済、生活は外国人の労働力なしに成り立たない状況になっているのですから。
なんか手段が目的化している気がしますね
繰り返しになってしまいますが、我々が懸念しているのは外国人労働者そのものじゃなくて、外国人が引き起こす犯罪や治安の悪化ですよね。
あとは某国の工作員とかですかね。
それなのにツイッター等を見てみると、その外国人労働者を適切に運用、規制する目的に設立された特定技能制度を「事実上の移民政策だ」と言って批判する。
ちょっとわけが分からないですね。治安悪化を懸念していたんじゃなかったんでしょうか?
外国人労働者規制ルール無しの無法状態の方がいいのでしょうか?
おそらくですが、
外国人労働者を受け入れないというのは、治安の悪化を防ぐ目的を達成するための単なる手段の一つであるはずです。
それがいつしか、外国人排斥することが目的になっちゃたんじゃないかなと思います。
よくある手段の目的化ですね。
私としては、目的が達成できれば手段にはこだわりません。
それに今の日本ではすでに多くの外国人労働者が働いていて、その方々が日本経済を支えている状況であるわけですから、いまさらその外国人労働者を排除するわけにはいきません。
で、その外国人労働者を規制し、適切に運用する特定技能制度は考えられる中でもっとも妥当な『手段』だと思うんですけどね。
まあ、まだまだ外国人労働者についてすべての問題が解決しているわけではないので、今後も制度を適切に改定していく必要があるのは言うまでもありません。