地方、旅行関連業は危機的状態
何かと批判の多いGo Toキャンペーンなんですが、
批判の声を上げる前に、とりあえずはこのグラフを見てくださいよ
宿泊旅行統計調査の延べ宿泊者数が今年に入って激減。
まだ、5月の数値は一時速報値ですが、前年同月と比較して84%の減少。(外国人は98%減)
・・・壊滅的と言えるような状況です。
このままでは6月と7月も減少し続ける事になるでしょう。
毎年8月が旅行者のピークなのですが、その売り上げを当て込んでいる旅行関連の業者は危機的な状況ですね。ほとんどの業者が業務を継続できなくなるのではないでしょうか。
GoToキャンペーン自体に反対している人も、何らかのテコ入れは必要だなという認識は共有できるものと思います。
宿泊業者への直接給付で何とかなるものだろうか・・・
旅行関連業者へのテコ入れは必須。
しかし、旅行者が増えることによる感染拡大のリスクが心配。
・・・これは理解できます。経済を優先し、ロックダウンを全くしなかったスウェーデンが悲惨な結果になっている事を考えるとね。全然大丈夫だとは言えません。
(まあ、スウェーデンは80歳以上の基礎疾患のある人の治療を放棄しているという話もあるんですが)
というわけなので、旅行を推進するのではなく、宿泊業者に直接給付をして当座をしのいでもらう・・・という案が出てくるのも分からない事はありません。
しかし、旅行により落ちるお金、発生する雇用とサービスは宿泊業者だけには留まりません。
上記の図は観光庁のHPにある旅行関連費用の経済波及効果を図式的に表したものですが、
GDPへの寄与は28.2兆円もあり、雇用を誘発する効果は441万人。単純な生産波及効果で見て55.4兆円と莫大なものです。
というのも旅行って、宿泊するだけではなく飲食はするし、レジャー施設にお金は払うし、移動交通にも費用がかかります。
他にもここで挙げきる事ができないくらいの多くの業者が関わっているのが旅行というもので、だから一口に給付と言っても、
一体どこからどこまでを対象として給付すればよいのか見当が付きません。
これ、今後数カ月でまとまりますかね? それまでに旅行関連の業者は耐えられますかね?
かなり厳しいのではないかなと思います。
あと、給付については持続化給付金がすでに実施されています。
なので、給付を実施すれば、事実上持続化給付金のオカワリとなってしまうので、政策が被ります。
旅行業界だけオカワリなんてズルいって声も上がるかもしれませんし、
持続化給付金は業績が悪化した中小企業の資金運営を助けるため
今回のGoToは実需要を喚起するため
と、用途、目的を分けて実施する方が良いのではないでしょうか。同じ政策を繰り返してもあまり効果は得られないと思います。
経済効果、および今後の問題
あと、直接給付の経済効果についてもちょっと疑問があります。
直接給付によって旅行関連の業者を救おうと思えば(どのように対象を選定するのかという問題はとりあえず置いておく)、かなりの予算を用意しなければならないと思います。
前述したように旅行関連の経済規模は大きいですし。
しかしながら、GoToトラベルの様に、宿泊費、移動費を補助するという形をとれば、予算以上の金額が旅行関連業者に落ちる事になります。
なぜなら、
半分は国の補助、半分は利用者が支出・・・の形で業者にお金が落ちることになるからです。
(1泊一人当たり2万円の補助が上限みたいですが)
ですから、予算の倍以上の経済効果があるわけですよね。(乗数効果を考えればもっとかな)
GoToキャンペーンが直接給付より経済的に効果があるわかりやすい例。
— sin👍GoToキャンペーン賛成 (@sin007777) July 21, 2020
例えば旅行する場合、荷物はホテルに宅配便で送る。
帰りはホテルから自宅へ。
お土産を現地から宅配便で送る。
これだけで一見観光とは関係ないように思われる宅配業者にも利益が出る。
こういう塵が積もれば山になる。
旅行以外にもかなりの波及効果があると思うんですよね。
まあ、今回のキャンペーン予算額は1兆7000億円ほど。この程度では気休めだという意見もあろうかと思いますが、やらないよりはマシですし、
直接給付では
・支給範囲の選定
・高額の予算の決定
という二つの高いハードルをクリアしなければならないため、私は政策実現性の観点からかなり厳しいと考えます。
できたとしても対応が遅くなり、手遅れになりかねません。
あと、
給付金はその場限りで終了ですが、GoToトラベルキャンペーンでは、旅行そのものに抱いている国民のネガティブなイメージがある程度払しょくされ、キャンペーン終了後もそれなりに旅行者が戻る・・・という効果も期待できると思うんです。
今はマスコミ報道の影響なのか、旅行者に対する風当たりが強い様に思います。
こんな時期に何事だ! ウイルスをまき散らすな! みたいな感じです。
ですが、移動する事自体にそれほど感染を拡大させるリスクはない様に思うんですよ。
今現在も通勤時間帯の電車はほぼ満員ですし、土日は都内の喫茶店なんか一杯で席がなかなか空いていないのですが、
満員電車や喫茶店などで集団感染が確認された・・・という話は聞きません。
もし、移動自体に、外に出ること自体にリスクがあるのなら、今頃日本全国で感染が拡大し、死亡者、重症患者数が激増していてもおかしくないでしょう。
確かに感染者数自体は増えていますが、それは軽症者や無症状者に対しても検査を拡大しているからであって、重症患者数自体については4月、5月の時とは明らかに状況が違います。
東京都のコロナウイルス重症患者数の推移
東京都 新型コロナウイルス対策サイト
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/cards/positive-status-severe-case/
リスクはゼロだと断言はできませんが、リスクゼロはあり得ない以上、どこかでリスクを取って経済を元に戻していかなければならないと思います。
旅行業界においては、8月のピークを目前に控えているという事もあって、ウイルスのリスクと経済とを天秤にかけ、総合的に考えてこのタイミグという決断を政府がしたのだと思われます。
- 体調が思わしくない場合は旅行を中止する。
- 旅行中はむやみに人ごみに入らず、他社との距離に注意する。
- マスクは常にする。
必要最低限の注意を払えば、それほどリスクは大きくはならず、旅行自体も十分楽しめると思います。
海外ではどうかは分かりませんが、モラル意識の高い日本人ならば大丈夫なのではないでしょうか。
(アメリカではNOマスクデモとかやっているみたいですし・・・なんだかなぁ)
自粛を断行し続けて、感染者を抑制することに成功しました。ですが、経済は死んでしまいました・・・
これでは、本末転倒です。給付もいつまでも続けられるものではありませんし。
キャンペーンを通じて、旅行に対するネガティブなイメージをある程度払しょくする事ができれば、旅行者が戻ってくる目途が立ち、銀行も資金を融資してくれる様になるかもしれません。
給付金で食いつないでいる状態では、金融機関もなかなか融資はできないでしょうからね。
GoToキャンペーンはトラベルだけじゃない
マスコミが意図的に報道制限しているのかと思えるくらい
GoToキャンペーン = 旅行
という図式がなんかできちゃっているんですけど、GoToキャンペーンは旅行だけが対象というわけではありません。
飲食、エンタメ、商店街にも補助が出ます。
だから、別に遠くに移動する必要はないんです。
地元でおいしいものを食べて、近場で泊まって。別にそれでもいいんです。
マスコミがあえて「旅行」だけをクローズアップしているのは、旅行者が増えることによる感染拡大のリスクを煽って、このキャンペーン自体を潰したいという思惑があるのでは・・・と、つい邪推したくなります。
ウイルスはこの世から消えてなくなるわけではありませんので、インフルエンザウイルスの様に今後も付き合っていくしかないわけで、いつまでも自粛自粛を続けるわけにはいきません。
リスクを課題に評価してしまうと、かえって失うものが大きくなってしまう事はよくある話です。特に観光業は一度潰れてしまったら、再生は容易ではありませんし。
というわけなので、私はGoToキャンペーンを支持します。