スティグリッツ教授が「日銀が買い上げた国債は無効にしていい」と発言、またシムズ教授が「債務はインフレで実質的に圧縮すればいい」と発言したために、増税派の財務省御用学者が早速反論めいた記事を書いているようです。

でもこれ完全にミクロな話ですよね。もうちょいマクロ的に見てほしいのですが。

「紙幣や国債は返済する必要がない」は本当か

「返済される」からこそ守られる大切なこと

http://toyokeizai.net/articles/-/163330

『「財布に入っている1万円札が日本銀行の借用証書であり、お札の持ち主が日銀に1万円を貸している」と考えている人はほとんどいないのかもしれない。しかし「実はそうなのである」ということをここであらためて考えたい。

最初から注意を促しておきたいのであるが、1万円札は「日銀がいつまでも返済する必要のない借金」などではなくて、「日銀がいつでも返済することを期待されている借金」なのである。紙幣が「返済される」からこそ日々無数の経済取引が紙幣を介して滞りなく取り結ばれている。当たり前であるが、この大切なことを一部の人は忘れているようである。

(中略)

「返済しなくてよい」なんて、誰が言った?

現在、盛んに議論されている金融政策提言の中でも、アデア・ターナー氏(英金融サービス機構・元長官)やジョセフ・スティグリッツ教授(米コロンビア大学)が主張する大胆な提言では、日銀が保有する国債について「いつまでも返済する必要がない」のであるから「ないもの」とすれば、日本の公的債務問題はずいぶんと解消されるというものである。いったん日銀が保有する国債が無効とされれば、日銀は紙幣や当座預金を返済する原資を永遠に失ってしまう。

一方、クリストファー・シムズ教授(米プリンストン大学)が主張している慎重な提言では、国債の「返済されない度合い」を政策的に微調整できるとして、「当面、返済されない」国債や紙幣が実質価値を下げて物価が上昇することを期待している。

しかし、これら2つの考えは、国債と紙幣が「返済される」という大前提によって1つ1つの通貨取引が守られているこの仕組みを、根底から殺(あや)めてしまう点ではまったく同じである。

私たちの社会にとってきわめて大切な通貨制度の根幹を揺るがしてまで達成しようとすることが、公的債務を踏み倒し、通貨や国債の価値を毀損して物価を上昇させることにあるならば、そのような経済政策は「どうかしている」としかいいようがないと思う。』

>「返済しなくてよい」なんて、誰が言った?

あのですねぇ~、誰も言ってないですそんなこと。

別に我々もスティグリッツ氏も、シムズ氏も借金の貸し借りの信用までを否定しようとしているわけではないんですよ。

ミクロ的な個別の国債の償還や借り換えは当然ある。それを前提として、国債の実質的な負担についてはインフレによって圧縮できるし、日銀と政府の統合政府で考えれば名目的には国債は日銀にあるのだけれども、実質的には負担は無いと考えて差し支えないと言っているだけ。借金は踏み倒していいとは言ってないです。

この辺については過去記事に書いていますので、それを参照ください。

すでに日本の財政は健全化してます

FTPLってなんぞ?

それに、

>1万円札は「日銀がいつまでも返済する必要のない借金」などではなくて、「日銀がいつでも返済することを期待されている借金」なのである。

って、 この一橋大学教授の斉藤 誠って人は金本位制の時代の人なんでしょうか?金本位制の時代はお金、紙幣の価値を担保するために同価値の金(ゴールド)を中央銀行が保有していたのですが、現在は金本位制ではありません。通貨の価値を担保しているのは金(ゴールド)ではなくて、その国の信用です。信用って言っちゃうと曖昧なんですが、モノやサービスの生産供給能力、経済力が通貨の価値を担保していると考えれば良いのかなと。

この人は、なんか古い理論を持ち出して、スティグリッツ氏やシムズ氏が「国の借金を踏み倒せ!」とかとんでもないことを言っている様な印象操作をしようとしている様に思える。

完全な論点そらしをやってますね。もう少しマクロ視点で日本の経済、財政を見て欲しいと思います。

国家の財政、債務をマクロ的にみると、短期にはあるかもしれませんが、国債の残高を減らしている国は存在しないんですよ。

(一部の小国や、産油国などの資源が豊富に産出される国は除外しますが)

で、先進国で2006年から2015年までの10年間で政府債務がどれだけ増えたのかについて、ちょっと表にしてみました。

出典:IMF http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2016/02/weodata/index.aspx

唯一減っているのがノルウェー(マイナスだと減少)。

ただ、ノルウェーは北海油田を保有しており、ヨーロッパ随一の資源国です。国の規模、人口も大きいとはいえないので、産出された原油の利益でノルウェー政府はやりくりできてしまいます。結果、財政収支が黒字になりって政府の債務(国債残高)が減少してしまうのも当然だと思います。

ちなみに、この表は政府債務の増加率が多い順に上から並べています。上位の国、10年間で政府債務が200%、つまり3倍以上に増えている国が複数あるのですが、2015年時点の政府債務対GDP比はそれほど高くありません。100%超えていないですね。オーストラリアなんか10年で借金が6倍に増えているのに・・・。

一方で日本は10年間でたったの30%程度しか政府債務を増やしていません。これは先進国で見てもかなり少ない方なのですが、皆さん御存知の通り、政府債務対GDP比は250%に迫る水準。先進国で最悪の数字ですね。

この違いは何なのか?

それは表に政府債務増加率と一緒に併記している、名目GDP、インフレ指数の増加が関係しています。

要するに借金が増えてしまっても、その分経済成長してGDPから見た債務の割合(政府債務対GDP比)を圧縮する。もしくはインフレにしてしまって債務の価値、負担自体を相対的に縮小してしまえば、政府の債務というものは問題なくなるということですね。

日本のマスコミは毎年のように「国の借金が過去最高を更新!」などと報道しているけど、政府の借金が過去最高を更新しているのは他の国も同じで、こんなアタリマエのことをなぜニュースで報道するのかワケが分かりません。

政府の借金は経済成長と共に増えていくのが当たり前で、前回のエントリー「起きるはずのないハイパーインフレをなぜ心配するのか」で引用した日経の記事で、インフレで債務を減らすとかそんなうまい話があるわけがないとか書いてましたけど、そんなうまい話が他の国ではごくごく当たり前のように、日常的に起きてるんですよね。

上の表を見れば一目瞭然でしょ?

日経が言ってるような「うまい話」、そして一橋大学教授が言っている「どうかしている政策」の成功例は周りにいっぱい転がってるのにね。なぜそれを無視し、目をそらして「消費税増税しか無い」なんて結論になるんだろうか。。。わけわかりませんね。

日本は借金を増やしているから財政が悪化しているのではなくて、経済成長していないから、デフレだから財政が悪化しているのです。それなのに景気を悪化させ、デフレを深刻化させてしまう消費税増税をやったら、日本の財政がかえって悪化してしまいます。

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