貿易・TPP

ハザードとリスクの違い


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 世界保健機関(WHO)傘下である国際がん研究機関(IARC)が除草剤ラウンドアップ等の成分であるグリホサートに「おそらく発がん性の可能性がある」と発表。(2015年3月)

 これを元に、ツイッターやFacebookなどで、モンサントのラウンドアップを批判するようなつぶやきや書き込みが散見されるのですが、

 その方々は、その後、WHOと国連食糧農業機関(FAO)が合同で「グリホサートに発がん性のリスクはない」と公表した事は知っているのでしょうか?

 FAO/WHO残留農薬に関する合同専門家会議(JMPR)は、農作物の残留農薬レベルや人の一日の摂取許容量を科学的に分析して評価している組織で、100年以上の歴史と実績があります。

 そのJMPRがグリホサートの運用と使用量、それと人の一日の摂取許容量を評価して、グリホサートに「発がん性の恐れはない」と評価を下したわけです。

これがその報告書です↓

http://www.who.int/foodsafety/jmprsummary2016.pdf

 

 同じWHOの傘下の組織であるIARCがグリホサートに発がん性があると評価し、JMPRが発がんのリスクなしと評価するのはおかしい。

矛盾しているじゃないかと思われるかもしれませんが、別に矛盾はしていません。

IARCは発がんがあるかどうかのハザードを評価している組織

JMPRは農薬の実運用において、実際に人体に悪影響を及ぼすかどうかのリスクを評価する組織

 なので、おかしい事はないのです。

 

 よくツイッターなどで、ハザードとリスクをごっちゃにして吹き上がっている方がいますが・・・(特に放射脳の方に多いですね)

 きちんとハザードとリスクは分けて考えてください。

 

 ハザードとは危害を発生させる原因、要因のことで、

 IARCは様々な物質(環境もだけど)の発がん性(ハザード)の根拠となる公開文書を集めて精査して、発がん性の有る無しを判定します。

 この発がん性のある無しには、摂取許容量とか、実際の運用、またその物質の効用や利便性はまったく考慮されておらず、後悔されている論文や実験結果から発がん性が確認できれば有りと判定します。

 

 例えば、アスベスト。この物質の発がん性については誰も疑いを持っていないと思います。

かなり危険な物質であるわけですが、これはもちろんIARCでもグループ1にカテゴライズされています。

 グループ1は「ヒトに対する発癌性が認められる」グループで、過去の実験や論文により、確実にヒトに発がん性があると判明している物質です。

 

 でも、このグループ1のリストを眺めていると、その中に「太陽光暴露」「アルコール飲料」「加工肉」という、我々のごく身近に存在しているモノまで、アスベストと同じグループに入っている事がわかります。

 でも「太陽光暴露」「アルコール飲料」「加工肉」を規制します!という事になっていないのは、確かにヒトに対する発がん性はあるけども、日々の運用上、ヒトの摂取許容量には届かない(届く可能性が低い)から、リスクがないと判断されてる・・・ただそれだけのことです。

 

 太陽光は紫外線に皮膚がんを発生させる要因(ハザード)があるが、日常生活を送る上で、皮膚がんを発生させるほどの紫外線を浴びるリスクはない。

 (でも日焼けサロンなどのご利用はホドホドに)

 同様にアルコール飲料についても飲み過ぎなければ問題はないわけです。

 加工肉も同じです。加工肉を食べすぎると肥満になって、生活習慣病を引き起こし、ガンになって死亡する可能性が高まります。

 

 要は実運用上、そのハザードを起因としたリスクが許容できる範囲内にあるかどうかを評価するのがリスク評価というわけです。

 で、冒頭でも説明したとおりJMPRはグリホサートの運用上、人間への発がん性のリスクはないと評価しました。

 というわけで、EUもグリホサートの使用許可を5年間延長しています。

 

 ただ当然、グリホサートを始めとした農薬が全く危険ではないというわけではなくて、各農薬の一日摂取許容量(ADI)を元に残留農薬の基準が設定されています。

グリホサートの一日摂取許容量(ADI)は日本でも評価しておりその評価レポートがコレです↓

http://www.env.go.jp/council/10dojo/y104-60/ref01.pdf

 

 その評価によると、グリホサートの一日摂取許容量(ADI)は1mg/kg/day

 この一日摂取許容量(ADI)とは人が毎日摂取しても一生影響がないであろうと考えられる最大許容量のことで、グリホサートの場合、体重60kgの人なら、一日60mgのグリホサートを摂取しても生涯に亘り、健康に影響はないということです。

 

 ちなみにADIには安全係数1/100がかけられているので、一日の摂取量が体重一キロあたり1mgを超えてしまっても、直ちに悪影響があるわけではありません。

 ADIの説明については下記の図が分かりやすいかと(これはメタミドホスを例としていますが)


http://www.fsc.go.jp/emerg/adi.pdf

 

 要は放射線の被爆と同じで、ある一定の基準を超えなければ人体に影響はでないということです。

 

 ツイッターでひまわりの種とベニバナの種のグリホサート残留農薬基準が400倍に緩和された、モンサントに有利な規制緩和! などと言っている人を見かけましたが・・・

 

 この基準値もグリホサートの一日摂取許容量(ADI)から算定されています。

 ひまわりの種、ベニバナの種の基準値が他の農作物よりも高いのは、日本人の食文化においてひまわりの種、ベニバナの種の摂取量がそれほど多くないからです。

 

 ひまわりの種、ベニバナの種が主食の国であれば、残留農薬を低く設定しなければADIを超えてしまいますが、日本は違いますよね?

 しかし、同じ日本の中でも摂取量については個人差があると思います。ひまわりの種が大好きなハ○太郎みたいな方がいるかもしれません。

 

 そのような個人差、誤差を吸収するために、ADIには安全マージンとして安全係数1/100がかけられているのです。

 

 このような食文化の違いにより、国によって基準値が異なるケースはよくあります。

 例えば、トランス脂肪酸なんかが有名ですね。

 

 アメリカではトランス脂肪酸は規制の対象となっているのですが、日本では規制するような動きはありません。そのことで政府を批判している人をたまに見かけます。

 でもね、バケツサイズの容器に入ったフライドチキンを平気で食べるアメリカ人と、日本人の食料品の規制値を同じにしちゃだめでしょう。

 

 アメリカではトランス脂肪酸の摂取量が極端に多いため、規制の対象になっていますが、日本人が平均的に食べる食事では、トランス脂肪酸の摂取量が健康に悪影響を及ぼす水準に達することが無いと判断されるため、規制されていないだけです。

 もし下手に日本でトランス脂肪酸を規制した場合、必然的に飽和脂肪酸の摂取量が多くなってしまうのですが、日本は比較的、飽和脂肪酸の摂取量が多いため、飽和脂肪酸の取り過ぎによる健康被害が発生してしまう恐れがあります。

 

 世の中にはゼロリスクなんてものは存在しません。いろんな、身近なところにハザード(危険の要因)が潜んでいます。

だから発がん性の恐れが有るもの(ハザードがあるもの)はすべて規制、排除!

 ってやってしまうと、外も出歩けなくなるし、酒は飲めなくなるし、口に入れられるものは相当限られたものになってしまいますよ。

 

 だから、きちんと効用、運用、摂取許容量をきちんと分析して、リスクが許容できる範囲に収まっているかどうか評価する必要があります。

 感情的になってはいけません。きちんとリスクとハザードの違いは理解しましょう。 

 ※紫外線についてはIARCのサイトを詳しく見てみると、溶接の光に含まれる紫外線と日焼けマシーンの紫外線と書かれているように見えますね・・・ま、太陽光の紫外線も紫外線に変わりは無いのでハザードとして変わらないと思うのですが、あくまで例の話として見て下さい。(3/6追記)

 


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