MMTってなんぞ?
今流行り(?)のMMT(Modern Monetary Theory)についていろいろ調べてみてはいるのだけど、人によってそれぞれ言っている事が違っていたりして、
これだ!と言えるものがないんですよね。
正直良くわかりません。
とりあえず聞きかじったものをかき集めて、自分なりにまとめてみましたが
- 政府は家計と違って、通貨発行権があるので、借金は通貨を刷って返すことができる。だから、破綻することはない。
- 政府は赤字でも問題ない。財政出動の制限があるとしたら高インフレ率になった場合。
- 財政の強弱でインフレ率をコントロールすることができる。
- 政府の赤字は民間部門の黒字になる。よって政府の黒字は民間の資産を減らす?
まあ、要するに100%自国通貨建ての債務であれば債務超過は問題ではない。制約はインフレ率。
ということかな。
うーん。
こうやって見ると、財政でインフレ率をコントロールできるし、破綻もしない。ものすごい万能な理論のように思います。
ただ・・・、これらの各論は賛同できる部分もあるのですが、全体で見るとこれ・・・
実際問題、きちんと実施、管理、運用できるかな?
というのが正直な感想です。
日本で実現可能なの?
今の日本・・・というか、普通の民主主義の国の予算決定プロセスは、市場の要求や調査、国民からの陳情なんかを汲み取って『どこにどれだけの予算を付けるか』を、官僚が考えて、国会議員が国会で審議して決める。
こんな感じかと思います。
だいたい、8月末に来年度の概算要求が出てきて、その内容を精査、国会審議を経て年度末までに来年度予算が決定。
そして、来年度になってやっと予算が執行される。
つまり、財政の意思決定プロセスにタイムラグがあるのです。早くて1年くらいでしょうかね。
なので、
よし、インフレ率が危険水域になった。財政を絞るぞ!ってなっても即座に対応可能なのか・・・?
うーん。
かなり難しいのではないでしょうか?
中国みたいな一党独裁の社会主義な国家ならポンッと財政調整できるのかもしれませんが、民主主義国家である日本では厳しいでしょう。
もし仮にタイムラグなしで財政の意思決定ができるようなシステムがあったとしても、
一旦増やした財政支出をそう簡単に減らすことが可能なのでしょうか?
給付金を例にすると。
ある日突然、高いインフレ率を理由に
「はい、インフレ率の抑制のために給付金止めますね!」
という事が、簡単に通用するのだろうか? ということです。
国民からの強い反発が起こるのは必至です。特にそれを仕事にしている人なんかは。
(その対策のためにJGPが提案されているのかもしれませんが・・・)
というわけなので、時の政権が支持率低下を気にして財政支出削減を躊躇する・・・なんてことが容易に想像できます。
しつこいようですが、日本は独裁政治ではありませんので。
・・・そして、増税へ
給付金ならまだいいですけど、政府の財政出動には利権がついて回ります。
MMTにより財政がもし野放図に拡大可能になれば、官僚はありとあらゆる理由をつけて自ら、もしくは関連団体(天下り先)の既得権益拡大に邁進するんじゃないかと思います。
政治家も当然絡むでしょうね。
一旦出来上がってしまった利権というものはなかなか排除することは難しいと思います。
その利権の恩恵を受けている人たちの反抗を受けるためです。
なので、そんな条件下にて機動的に財政支出を拡大、縮小して日本が経済、インフレ率を適切にコントロールできるかというと・・・
私は無理だと思うんですよね。
予算のコントロールができなくてインフレ率が発散してしまうリスクがあるのでは? と思います。
それで結局消費税で調節する・・・という事になりそうな予感しかしません。
生産性の問題
そしてその利権によってできたシステムというものは、だいたいが生産性が低く、非効率的。
日本全体の生産性も落ちて、潜在成長率が伸び悩む・・・
名目GDPだけが伸びて、実質的には成長できないという経済体質になりかねません。
その利権に与れる人ならばそれで問題ないのかもしれませんが、普通の国民はとばっちりを食うだけ。
利権をうまく食む者だけが富み、正直者がバカを見るような社会になってしまうのは正直イヤですね。
MMTは政策の実現性に疑問、現実はシムシティじゃない
一方で量的緩和を始めとした金融政策は、利権にはそれほど直結しません。
現に今現在、比較的簡単に量的緩和による国債買取りの量を減らすことができていますし、財政予算と違って国会審議を経ることもなく実行できますので、インフレ、デフレに対してより柔軟に対応できるでしょう。
まあ、
いかにMMTは各論、机の上では成り立っていても政策的に実現性がなく、実現が困難であれば意味がないと思います。
現実はシムシティじゃないですからね。
MMTについては今後もちょこちょこと書いていこうと思います。