GDPの恒等式は最終的な結果を表した式にすぎない
これは池戸氏のツイートですが、
Y=C+I+G+(X-M)のGDPを表す公式において、G(政府支出)を増やしても、Y(国民所得)は増えないとか言っている人は、「私は足し算ができないバカです。」と言っているようなものです。足し算もろくに出来ないのが、経済学者なのです。
— 池戸万作 (@mansaku_ikedo) April 30, 2020
GDPの内訳というかこの恒等式
Y = C + I + G +(X - M)
要するに
国民総生産(GDP) = 民間消費 + 民間投資 + 政府支出 + 純輸出(輸出ー輸入)
なわけなんですけど、この式を見て、池戸氏は政府支出を増やせば国民総生産(GDP)が、政府支出を増やした分だけ増えると主張されています。
この恒等式を単純な足し算の式と見て、そう主張されているのだと思いますが、これは間違いです。
というのも、
C(民間消費)も、I(民間投資)も、G(政府支出)も、XM(輸出入)もそれぞれが独立した変数ではなく、それぞれが複雑に相互に影響しあっているため、
単純にG(政府支出)を増やしてもI(民間投資)などの他の要素がそのままであることはありません。
池戸氏は
「足し算もろくにできないのが、経済学者なのです」
と言ってますが、この恒等式は単純な足し算ではありませんので、この批判は完全に的を外しています。
むしろ、単純な足し算だと考えている自分が間違っているのだと認識すべきかと思います。
この恒等式、再掲しますが、
Y = C + I + G +(X - M)
これは単なる足し算の式ではなくて、それぞれの要素が影響しあって、最終的に一年間(決まった期間)の結果が出て、それを式にしたらこの関係になるというだけの話。
最終的な結果を表した式にすぎず、それぞれの内容を掘り下げると凄まじく複雑です。
国民総生産のことをきちんと理解しているのなら「足し算」とは言えないはずだと思います。
GDPは「国民総生産」です
そもそもですが、GDPとは、
国民が国内で作った付加価値の合計値です。
したがって、GDPは国民の生産能力、生産性、労働力・・・つまりリソースに大きく依存しています。
簡単に言うと、
国民が持っている生産能力のキャパ、リソースを超える生産はできないということです。
当たり前といえば当たり前ですけどね。今の倍、休みなく働けというのなら話は別かもしれませんが。。。
今はコロナの影響で民間の投資が委縮しているかもしれませんが、昨年までは民間企業が投資をどんどん増やしており、工事や部品、資材を供給するメーカーもリソースキャパがいっぱいいっぱいの状態です。
※民間企業の設備投資は過去最高を更新中
今はコロナの影響で民間の投資が委縮しているかもしれませんが、昨年までは民間企業が投資をどんどん増やしており、工事や部品、資材を供給するメーカーもリソースキャパがいっぱいいっぱいの状態です。
建設業の求人倍率は5~6倍。完全な人手不足、リソース不足です。
このような状況で政府が支出、例えば公共工事を増やしたとしても、業者がその注文をさばききれません。
今でも手持ち工事が何兆円と積み重なっている状況ですし・・・
仮に無理に、公的工事の方を優先させたりした場合。今度は民間企業の投資注文を受けられなくなるので、民間投資Iが減少します。
民間投資が減少してしまうと民間企業の生産活動は縮小してしまいますので、将来的な供給能力もスポイルされて、日本はどんどん政府支出に頼らなければ経済を維持できない、社会主義チックな国になっていってしまいますね・・・。それは嫌すぎます。
我々国民の生産能力、供給力、リソースが無限大であれば、政府支出を拡大した分だけGDPも成長するという事もあり得るかもしれませんが、リソースは当然ながら有限です。
よって、池戸氏の説は、国民の生産供給リソースが無限大であるというあり得ない前提条件の元でしか成り立たないわけで・・・。かなり無理があると言わざるをえません。
ただ、コロナ禍で、経済が委縮している今現在ならば、日本が持っている生産リソースをフルに稼働させていない状況であるので、ある一定の財政出動は効果的であると私は考えています。
繰り返しますが、
私は別に財政出動の一切が意味が無いと言いたいわけではありません。
GDPは国内で生み出された付加価値の合計であるということ、リソースは有限であるという事を、きちんと念頭に置いて欲しいと言っているだけにすぎません。
生産キャパを超えた生産はできません。 生産量を超えた消費もできません。
という、当たり前のことをきちんと理解しましょうよと言っているだけです。
サプライサイド経済学だとか言われそうだけど
これまでの説明を理解できたら、GDPを増やすためには何が必要なのかもうお分かりですよね?
そう、GDPを成長させるには
国民の生産性、供給能力を向上させる必要があります。
具体的な政策としては、企業の設備投資を促す金融政策や、業務の効率化を促す規制緩和などでしょうか。
これを言うと、たぶん
それはサプライサイド経済学だとか、セイの法則を鵜呑みにしてんのかとか言われそうですけどね・・・
とは言っても、GDPって「国民総生産」なんですよ?
総生産量を増やすのならば、生産性を向上させないとだめですよね? 間違ってますか?
昔の高度成長期の日本ならば、田舎に働き手いっぱいいて、その人たちが都市部に移動して働きだす。
という、田舎の働き手という余ったリソースがたっぷりあったため、生産性の向上をそれほど考えなくても総生産、GDPを向上させる事ができましたが、
今の日本はそのリソースを目いっぱい使っている状態であるため
(いわゆるルイスの転換点を超えた状態)
国民一人一人の生産性を向上させなければ、GDPを増やすことが難しい状況にあるのです。(人口も減りますし)
それにね。
国民一人一人の生産性を向上させ、効率化を図ったら、それだけ財政出動による経済成長の余地が増える事になるので、
なぜ世の財政出動派と言われている人たちが、生産性、効率を向上させる規制緩和などに反対するのか、良く分かりません。
潜在成長率もなぜか否定しているっぽいですし・・・
はっきり言ってイミフです。
まあ、前述したように、日本を財政出動漬けにして、政府支出なしでは経済が成り立たないようにして、民間企業はどうでもいいので、政府支出のウエイトを高めたいと考えているのかもしれませんね。
政府支出には様々な利権が絡みますので、それを狙った活動家や評論家が現れるのも、まあ、あり得なくもないかなとは思います。
我々はそんな日本の将来を何にも考えていない、私利私欲にまみれた活動家には騙されないようにしなければなりませんね。
誰とは言いませんけどw
とりあず、リソースをガン無視した、現実離れの経済論はやめにしましょう。