水道事業の民営化は失敗して次々と再公営化している?
ツイッターやマスコミの報道を見ていると、世界中で実施されている水道事業の民営化(ほとんどがコンセッション方式だけど)はことごとく失敗し、次々と再公営化をしているように感じますが、本当にそうでしょうか?
再公営化の一番有名な例がフランスのパリだと思うんですが、再公営化が世界の潮流であるのなら、パリに続く再公営化の例が次々に出てこないのはちょっとおかしいですよね・・・
というわけで、ちょっと調べてみました。
フランスの水道事業事情
このグラフはフランスで民間活用(コンセッション方式)を採用している事業体と公営の事業体の割合推移を示したものですが、
6年間でほぼほぼ横ばいですね・・・
で、2010年~2015年の間に再公営化した事業と民間活用に移行した事業の数はというと。
これもほぼ同数です。
あれ? 再公営化が世界の潮流じゃなかったんですか???
パリは2010年にコンセッションの契約を更新せずに、再公営化したわけなんですが、民営(コンセッション方式)に問題があり水道料金が高騰しているということが本当であれば、もっと雪崩を打って再公営化する事業、都市があってもおかしくはないと思います。
でも、実際は民間活用(コンセッション)契約を更新する事業がほとんどなわけで・・・
フランスで再公営化した事業は全体の1.1%に過ぎず、公営からコンセッションに移行した事業体は2.1%。
むしろ民間化が進んでますね。
再公営化が世界の潮流とはいったい何を根拠に言っているのでしょうか?
参考
海外の水道事業における民間活用の状況等について (厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000508885.pdf
アメリカ、ドイツも同様
この図はアメリカの水道事業の民営、公営の割合を示したグラフですが、2013年→2018年の5年間の間に公営化が大きく進んだ・・・という傾向はみられませんね。
1%だけ公営が増えていますが、これをもって「公営化が潮流だ」というのは無理があるかと思います。
ドイツも同じで、事業体自体は公営の割合が多くなってているように見えなくもないですが、給水量ベースで見ると民営の割合が多くなっています。
ドイツでは人口が多い地域を民営で、人口が少ない過疎地域を公営でカバーしているという運用体制なのかなと思われます。結構合理的なやり方のような感じがします。
いずれにしても、
「再公営化が世界の潮流」
といった様子はこのデータからは読み解けません。
参考
海外の水道事業における民間活用の状況等について (厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000508885.pdf
巷のうわさが本当ならば再公営化する都市、事業体が増えてもおかしくないんだけど
ツイッターを見ていると、水道事業を民間にやらせると水質が悪くなり、価格が高騰したりと、なにもメリットがないみたいな印象を持ってしまうんですけど、それが本当ならばフランス、ドイツ、アメリカが民営(コンセッション)を続ける理由が分かりません。
私も民営(コンセッション)に全く問題がないとは言いませんが、おそらくなんですけど、皆さんがお持ちの民営の問題は情報が古すぎるんだと思います。
自治体はバカではありません。
問題があれば改善します。
過去の失敗を教訓として、改善修正を続けて今の形になっているんだと思います。(日本の水道法も過去の失敗事例に学んで改善策を取り入れています)
ツイッターでも最新の民営化の問題が一向に出てこない、出てきたとしても松山や気仙沼の様なデマ情報ばかりなのはそこに原因があるのだと思います。
最新の情報漁っても問題点が特に出てこないので、なんか新しいのが出てきたら情報を精査せずにデマ情報にまで飛びついてしまうって感じなんでしょう。
新しい情報が出てこない時点で、自分たちの考えおかしくね?(古くね?)って考えるのが普通だとは思うんですけどね。
情報は常にアップデートしないと時代の変化に取り残されちゃいますよ。
他のエントリーで、水道料金や品質悪化の件も見てみようかと思います。
まとめ
- フランスでは再公営化とコンセッション方式に移行する事業体がほぼ同数
- アメリカとドイツも再公営化の流れではない
- 水道民営化の問題で出てくるのは過去の古いネタかデマ情報ばかり・・・情報をアップデートするべき